2話 インテリトス帝国の職業紹介所
インテリトス帝立西地区職業紹介所。ガラスのドアが、すごく大きい。見るからにお金をかけているのがわかる。帝国はあまり商業者には干渉してこないけど、どうせするなら権威を見せつけよう、といったところだろう。
ドアを引くといくつかの窓口と、縦2バルム(1バルム≒0.9メートル)、横3バルムぐらいの掲示板がある。ひとまず掲示板を見たほうが良さそうだ。パッと見た感じだと、50枚ぐらいだろうか?各商店ごとに求人について書かれた紙がいっぱい貼ってある。
近づいてみてみると、圧倒的に成人済み対象が多い。
どうやらあと3年は待たないといけないようだ。でもそんな悠長なことは言ってられないから隈なく探す。しかしやっぱり、あったとしてもそれは対象が男限定だったり、条件を満たさないものばかりだった。
「すみません」
しょうがないから受付の人に話しかける。あの人以外と話すのは何年ぶりだろうか。確か四年前にアイツ等が来たことがあったはずだから四年ぶり?
「はい、何でしょうか?」
「私でもできるような仕事ってありますか?」
「失礼だと思いますが成人済みでしょうか?それによってご紹介できるものも変わりますので」
「いえ、今12歳です」
「えーと、だとしたら難しいかもしれませんねえ」
そう言って彼は机においてあった手帳をパラパラとめくる。それにしてもこの人、顔立ちが整っている。ここの受付だけ後ろに結構並んでいるし、もしかしたらここではすごい人気者だったりして。
ふと後ろを見るとすごい目でこちらを見ている人たちがいる。もはや視線だけで、人を殺せるんじゃ……いや、きっと後ろのお姉さま方からの嫉妬の目線なんて存在しない。しないったらしないのだ!
「いやあ、つい先日、とある商会が解体されてから帝都も混乱していますからねえ」
パタン、と音を立てて彼の手帳は閉じる。
「申し訳ございませんが、どうやら無いようです」
「そうですか、ありがとうございます」
「なにか協力できることがあればいいのですが……」
「あの、その解体された商会について教えてもらえますか?」
「わかりました」
いい笑顔を返す、受付の人。それから少し話をした後、後ろには気づかないふりをして足早に立ち去る。大きなドアを閉めて歩き出すと大きなため息が漏れてきた。
「ふーーーーーーーー」
私は途方に暮れていた。端的に言えばそもそもの仕事の数が少ない。
帝国、いや世界でトップクラスの大商会が不正が内部からの密告によって発覚し、潰れたらしい。商会長一家は皆捕まったそうだ。
帝都を経済的に表と裏、両方から牛耳っていた組織が崩れたことで大混乱が起きている。商会が溜め込んでいた帝国札や星帝札までもが市場に流出して、何故かお金の価値が四分の一ぐらいにまで下がっているらしい。
……でも私にはお金の価値がそんな簡単に変わるとは思えない。アイツ等ならその辺の理由もよく知っていそうだが。
物やサービスの値段も跳ね上がり、どうやら私の所持金では野宿しても長くて10日程度らしい。それに混乱が続けばもっとお金の価値が下がるのだとか。
一体どれだけのあくどいことをやっていたのか。帝国、ひいては世界全体が混乱に陥るのに、帝国は商会を潰した。すなわち潰す必要があったのだから大概だろう。
しかし、そのせいで私が迷惑を被っているのだから許せない。
とは言ってみたものの実際なんの力もない小娘一人では何もできないから仕方ない。それに、仕事がないのは身長や年齢、性別から私ができる仕事がなかっただけで景気は関係ないらしい。
ひとまず、私は職業紹介所の職員の彼が紹介してくれた、安くて、その割にいい宿に行くことにする。
しかし、6時を過ぎたのにまだ明るい。流石に火の月に入っただけある。そこまで遠くにはないといっていた通り、少し歩くとすぐに見つけられた。
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