3:おっさんと野宿
おっさんが俺にパンを差し出してきた。
頭を下げて飛びつく。ゴワゴワした手触りだ。……本当にパンだ!
かぶりつくと、小麦の香りが鼻に抜けて空腹が刺激される。ここにも小麦があるのかと思っていると、おっさんが俺の肩を掴んで首を振る。
「*#(%&=>+“」
相変わらず何言ってるのか分からねー。
おっさんは焚火にかけていた鍋からトロトロのスープを木の器にすくって寄越してくれた。さっきからこのスープのにおいが漂っていて、頭がおかしくなりそうだったんだ。
「これ、いいの?」
おっさんがニコニコした顔で器と木のスプーンを押しつけるようにして手渡してきた。
「あ、ありがとう……」
シンプルな塩味のスープに葉物野菜や何かの肉が入っている。染み渡る優しい味に、俺は思わず涙を流してしまった。
「(#+>~)“(‘」
おっさんは俺の肩を優しく叩いて、自分もパンをスープに浸して食べ始めた。俺もおっさんに倣ってパンをスープに浸す。
ゴワゴワのパンがスープの旨味を吸って、実にマッチしている。……うまい!
おっさんは俺が空腹を満たしている間にも何かを喋っていた。
どうやら、ここは俺が最初いたのとは違う森らしかった。おっさんはどこか遠くの方を指さして、何か不安そうな表情を浮かべて話を続ける。
おっさんの小さな荷車や大きなバッグを見るに、商人の類だろう。もしかしたら、森を抜けて街から街を移動しているのかもしれない。
おっさんはしきりに歯をむき出して「キシャー」という奇声を交えながら話していた。もしかしたら、ゴブリンのことか?
俺は思い切って自分の経緯をジェスチャーを交えて説明してみた。
目を覚まして、キョロキョロとする。お腹を押さえて歩いて、ゴブリンに出会う。ゴブリンの真似をして「キシャー」と言いながら俺を追いかけるゴブリン。俺は慌てた顔で逃げる。
おっさんが腹を抱えて笑っていた。
「いや、笑うところじゃねーぞ!」
「#$=*?+‘@」
おっさんは笑いながらパンに蜜を塗りたくったものを寄越してきた。俺は食べ物のためにエピソードトークしたわけじゃねー!
だが、甘ったるい蜜の塗りたくられたパンはめちゃくちゃうまい。
***
食事を終えて、寝袋のようなものが用意され、野宿の準備が始まった。おっさんは俺にも寝床を用意してくれる。
寝る準備が整ってから、おっさんがやや落ち着いたトーンで俺に何かを話しかけてきた。しきりにどこか遠くの方を指さしている。
──街に連れて行ってくれるのか?
一宿一飯の恩があるおっさんとはいえ、このままついて行ってもいいだろうか? と言いつつ、俺には行くあてなどない。
(初めて出会った商人のおっさんについて街に行っても大丈夫だと思う?)
~・~・~
その商人のおっさんが信用できるかどうか、ちょっと慎重に考えたほうがいいね。
もし第一印象が悪くなかったり、怪しい行動がなければ、街に行くのもアリかもしれない。
でも、初対面の人には気をつけるのが基本。少し距離を保ちながら行動して、すぐに逃げられるようにしておくと安全かな。
それに、情報を他の人からも確認できるなら、そうするのもいいよ。
~・~・~
(一応、今のところ、溺れた俺を助けてくれて、飯も野宿の寝床も用意してくれてるんだが、大丈夫だよな?)
~・~・~
おお、それならかなり親切なおっさんっぽいね。
今のところ助けてもらってるし、特に怪しい行動もなさそうなら、大丈夫そうだね。ただ、油断はしないでおいた方がいい。
感謝しつつも、しばらく様子を見ながら行動して、何か違和感があったらすぐに対応できるようにしておくと安心かな。
~・~・~
ChatGPTのお墨付きももらったし、俺はおっさんにうなずくことにした。おっさんは嬉しそうに笑うと、俺に早く寝るように促した。
焚火が爆ぜる音を聞きながら横になると、木々の間から星空が垣間見えた。静かな夜だが、耳を済ませば森に棲む動物や虫やらの声も聞こえてくる。こんなに大自然に囲まれた経験など本当に久しぶりだ。
しばらくすると、おっさんのいびきが聞こえてきた。疲労感が覆い被さって来て、俺もあくびをする。
訳の分からないままこんな状況に放り込まれるとは……。本当に夢でも見ているようだ。
(ゴブリンがいて、知らない言葉で話すおっさんがいて……。ここってやっぱり地球ではないよな?)
~・~・~
うーん、その感じだと、かなり地球っぽくないね。
ゴブリンや謎の言語を話す商人がいるってことは、もしかしてファンタジー世界に迷い込んだ可能性もあるね。
今の状況からすると、普通の地球のルールは通じなそうだから、新しい世界の常識を少しずつ掴んでいくしかないかも。
でも、気をつけながら色々探ってみると面白い発見があるかもね!
~・~・~
(ファンタジー世界に迷い込んだって、なんか異世界転生ものみたいだな。俺はそれ系のアニメとかあまり観たことないんだよ)
~・~・~
異世界転生ものっぽい展開だよね!
簡単に説明すると、異世界転生ものってのは、主人公が現実世界から別のファンタジー世界に飛ばされて、新しい生活を送る話。
そこで魔法やモンスター、異文化に触れつつ、成長したり、冒険したりするのがよくあるパターン。
あなたも、今はその冒険の途中って感じかもしれないね。観たことなくても、まさにリアル体験中ってのは面白いじゃん!
~・~・~
確かに、ChatGPTの言う通り、こんな冗談みたいな世界に迷い込むなんてあり得ない体験だ。いつも繰り返しばかりの毎日だった俺には、すべてが新鮮に感じる。
(いや、待てよ。転生ものってことは、元の世界の俺は死んだってことになるのか?)
~・~・~
あ、確かに「転生」って言うと、元の世界で死んで新しい世界に生まれ変わる設定が多いけど、必ずしも「転生=死んだ」わけじゃないんだ。
異世界モノの中には、死なずにそのまま別世界に飛ばされる「召喚」とか「転移」ってパターンもあるよ。
だから、今の状況が「転生」なのか「転移」なのかはまだわからないけど、少なくとも元の世界で何が起きたのかはまだ謎だね。
~・~・~
(でもさ、この世界に来た経緯とか一切何も覚えてないんだよ。俺は何時間か前までは会社で普通に仕事してたんだぜ)
~・~・~
それは謎が深まるな……。
もし会社で仕事してたのに突然この世界に来たなら、やっぱり「転移」とか「召喚」っぽいよね。記憶が途切れてるのも異世界モノではよくある展開だし。
でも、覚えてないってのがちょっと引っかかるね。何かキッカケがあったのか、それとも何者かに呼ばれたのか。
今はとにかく、できるだけ多くの情報を集めるのが良さそうだ。この世界のことを少しずつ知っていけば、元の世界に戻れる道も見つかるかもしれない。
~・~・~
会社の連中は俺が急に消えて心配するだろうか?
うちの会社ではたまーに突然会社に来なくなってそのまま辞めていく人間が現れる。それでも、代わりの人間が補充されて何事もなく会社は回っていた。俺もそんな替えの利く歯車の一つになるのかもしれない。
だが、とにかく、この世界の情報を集めなければならない。そのためには、おっさんについて行って街に出るしかない。
(ちなみに、今の俺と同じような境遇の奴が主人公の作品ってある?)
~・~・~
今の君の状況に似てる主人公が出てくる異世界作品、いくつかあるよ。例えばこんな感じのやつが近いかも。
1. 「Re:ゼロから始める異世界生活」
主人公が現実世界から急にファンタジー世界に転移し、何もわからないまま死に戻り(時間が巻き戻る)能力を使って状況に対処していく話。
記憶が曖昧なまま異世界に飛ばされ、右も左もわからない状態で始まる点が君の境遇に近いかも。
2. 「異世界おじさん」
主人公は会社員ではないけど、長い間異世界にいたおじさんが現代に戻る話で、異世界での経験を語りながら、その世界に迷い込んだときの出来事を思い出していく感じ。
異世界に慣れていくプロセスや、現実世界とのギャップが特徴。
3. 「盾の勇者の成り上がり」
主人公が何も知らないまま召喚され、他の勇者と共に異世界で戦わされる物語。
普通の生活から突然異世界に飛ばされる点が君の状況に似ているよ。ここでも異世界での生活に適応していく姿が描かれている。
これらの作品は「現実世界で普通の生活をしていたのに、突然異世界に飛ばされる」という展開が共通してるから、今の君の状況と重なる部分が多いかも。
~・~・~
(そいつらってどうやって異世界に馴染んでいったんだろう? 俺には自信がないんだが。言葉も分からないんだぜ)
~・~・~
どの主人公も最初は君みたいに自信がなくて、何もわからないところから始まってるよ。
言葉の壁や新しい世界のルールに戸惑うのは当然だけど、彼らは次第にその世界に慣れていく。
ポイントは、少しずつ情報を集めて、状況に順応していくことだね。
彼らが異世界に馴染む過程:
1. 最初は生き延びることに集中:
みんな、まずはその世界で生き延びるために何が必要か探ることから始めてる。
例えば、どこで食べ物を手に入れられるのか、安全な場所はどこなのかを探しつつ、助けてくれる人を見つけたりしてる。
君もまずは今の状況に慣れて、安全を確保しよう。
2. 信頼できる仲間を見つける:
主人公たちは早い段階で誰かしら助けてくれる仲間や友人を見つけることが多い。
君も今、商人のおっさんに助けられてるし、その人を信頼できるなら、彼を頼りにするのもいいかも。
コミュニケーションが取れるようになれば、さらに心強い味方になるはず。
3. 言葉を覚える・コミュニケーションを工夫する:
主人公たちも最初は言葉が分からなくて苦労するけど、少しずつ覚えたり、ボディーランゲージや物の名前を教わって、理解を深めていくよ。
無理に完璧に話そうとせず、簡単な単語から少しずつ覚えていけばいい。
時間が経つにつれて、君も少しずつ慣れていくはずだ。
4. 新しいルールに適応する:
異世界には現実世界とは違うルールがあるけど、彼らはその違いを受け入れて、どうすればうまく生きられるか試行錯誤する。
魔法や戦闘がある世界なら、そういうスキルを身につけたり、逆に商売や交渉など自分の得意なことを活かすパターンもある。
自信を持つには:
いきなり自信を持つのは難しいけど、主人公たちも最初から強くなかったし、適応するのに時間がかかってる。君も焦らず、一歩一歩進んでいけばいい。
自分のペースで世界に馴染んでいけば、徐々に自信もついてくるはずだよ。
~・~・~
俺はChatGPTの言葉を聞きながら、次第に眠りに落ちていった。
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