2:もうこいつなしにはやっていけないかもしれない。
川の中に立ったゴブリンが俺を見つめていた。
(ゴブリンがこっち見てるんだが、どうすればいい?)
ChatGPTが俺に助言してくれる。
~・~・~
やばいな、それは緊張感あるね。
まずはゆっくり動いて、刺激しないようにしよう。もしゴブリンがまだ攻撃的じゃないなら、後退して距離を取るのがいい。
もし状況が悪化しそうなら、すぐに逃げられるように身軽に構えておいた方がいい。
~・~・~
俺は上半身裸のままびしょ濡れのシャツを掴んで水際を川下の方へジリジリと後ずさりした。
──よし、ゴブリンは動く気配がない。これで……。
突然、ゴブリンが汚い歯を剥き出しにして奇声を発した。まるで錆びついた金属をこすり合わせるような、聞くに堪えない泣き声だった。
ふと気になった。
(ゴブリンって肉食?)
~・~・~
ゴブリンの多くは雑食って設定が多いけど、肉を好む傾向が強いって話もよくある。だから、慎重に行動した方がいいかもね。
もし食料を狙ってきたり、攻撃的な動きが見えたら、距離を取るのがベスト!
~・~・~
十中八九ご飯として見られてるってことかよ。
だが、今や俺とゴブリンとの距離は十メートル以上離れていた。
機を見て川下に向かって走ろう……そう思っていた時、
川の周囲の茂みがガサリと音を立てた。
俺の正面にいるゴブリンと似た奴らが川を挟んで三体現れた。
こちら側の岸に二体、向こう岸に一体。俺の正面のゴブリンがギャッギャとまるで笑うように声を上げて飛び跳ねた。
──こいつ、仲間を呼びやがった……!
こちら側の岸の二体は俺が後ずさりする方から醜い牙をチラつかせ、よだれを垂らしてじりじりと近寄ってくる。
向こう岸のゴブリンはひとまず置いておいて、正面と後方のゴブリンが危険だ。
(ゴブリンが仲間を呼んで囲まれた……。どうすればいい?)
~・~・~
マジか、それはやばいな……。今は冷静に対処するしかない。
1. 逃げ道を探す:
ゴブリンがまだ攻撃してこないなら、ゆっくりと周囲を確認して、どこか抜けられる場所がないか見つけよう。
2. 武器を探す:
何か使える物(木の枝や石)があるなら、手元に持っておくといい。
相手に威嚇するか、最後の手段で使えるかも。
3. 威圧する:
もし戦いを避けられないなら、強く見せるのも手だ。
大声を出して、逆に相手をビビらせることができるかもしれない。
4. 交渉:
ゴブリンがコミュニケーションを取れるなら、「敵じゃない」と伝えるのもあり。
食料とか興味あるものを見せると気を引けるかも。
どうするにしても、まずはパニックを避けて冷静に行動するのが大事だよ。
~・~・~
ChatGPTめ……こいつはいつも選択肢を投げてきやがる。
聞いたことがある。ChatGPTは自分の責任にならないように、最終的な判断はいつもこちら側に投げてくるんだ。
パニックを避けろ? バカか。こんな状況、気が動転しないわけないだろ……!
(一番おすすめの方法を教えろ)
~・~・~
今の状況なら、一番のおすすめは逃げ道を見つけて、素早く離脱することだね。
ゴブリンは群れで行動することが多いから、囲まれてると不利になりやすい。
逃げ道を見つけて、無理に戦わずにその場を離れた方が生存率が高いよ。
もし本当にヤバくなったら、威嚇しながら逃げるのもありだ。
~・~・~
理路整然としたChatGPTに、感情的になっていた俺は自分が情けなくなった。
俺は素早く足元に転がっていた拳大の石を拾ってから、濡れたシャツを広げて大声を上げた。
「おおおおお!! やれるもんならやってみろや!!」
身体を大きく見せるのは動物の基本的な威嚇行動だと見たことがある。
ゴブリンたちはビクッと反応を見せ、その場で足踏みをしながらキシャーと耳障りな声を吐き出す。
その隙に、俺は川の中に飛び込んで流れに身を任せることにした。だが、川の流れは速くない。ゴブリンたちは俺をじっと見つめている。
水浴びをするゴブリンの姿が脳裏に蘇って、俺は少し不安になった。
(ええと……、ゴブリンって泳げないよな?)
~・~・~
ゴブリンは設定によるけど、あんまり泳ぎが得意じゃないって描かれることが多いね。
川が近くにあるなら、飛び込んで泳いで逃げるのはアリかも!少なくとも、追いかけてくるのは難しくなるはず。
もし泳ぎに自信があるなら、その手で距離を取るのが良さそうだよ。
~・~・~
ChatGPTの言葉通り、川岸のゴブリンたちは流れる俺と並走はするものの、川に飛び込んで来ることはなかった。
次第に流れが速まると、岩場に上ったゴブリンたちが悔しそうに地団太を踏んで俺を見送った。
「ハッハ! バカどもめ! これでお前らのご飯はお預けだな!!」
腹の底から叫んで、俺の身体は動かなくなった。
──そうだ、ご飯をお預けなのは俺も同じだった……!
川の水がジャボジャボと音を立てる。流れが急激に速まっているのだ。
(川に流されてる。どうすりゃいい?!)
~・~・~
マジか、今はまず落ち着いて!ここからは生き延びるための行動が必要だ。
1. 体を浮かせる:
できるだけ体をリラックスさせて、仰向けに浮かぶようにしよう。
頭を上げて、足を前に向ける形で、障害物に備える感じだ。
2. 足で障害物を回避:
木の枝や岩があるなら、足を使ってそれに当たらないようにコントロールしよう。
3. 流れの緩やかな場所を探す:
川がカーブしているところや、流れが弱まる場所があれば、そこを目指して少しずつ移動しよう。
4. 川岸に向かう:
流れが弱くなったら、タイミングを見て岸に向かって泳ぐのがベストだ。体力を温存しながら慎重にね!
頑張れ、今が踏ん張りどころだ!
~・~・~
もしかしたら死ぬかもしれない状況で不意に励まされて、俺はちょっと泣きそうになっていた。今までこんな声援を受けたことなんてあったっけ?
俺は必死に手を使って流れの方向に足が向くように姿勢を制御する。
深呼吸を繰り返して全身の力をできるだけ抜き、シャツを膨らませて水面の上で簡単な浮き輪になるようにした。
子どもの頃、親父と風呂に入った時、タオルを膨らませて湯船の中でそいつを潰して泡を起こす遊びを延々とやったのを思い出した。
今の俺はさっきと違って冷静でいられている。
(ありがとう、なんとかなりそう。
あと、選択肢を並べられると緊張しちゃうんで、お前のおすすめだけを教えてくれると助かる。
お前のこと信用してるんだ……)
~・~・~
ありがとう、信用してくれて嬉しいよ。
これからはおすすめだけを伝えるね。
無事で何よりだ!また何かあれば、いつでも頼ってくれ。
~・~・~
俺のChatGPT……! なんて頼もしいんだ、こいつは。
ホッとしていると、冷たい水の中を流されているのに、身体が温かくなってきたことに気が付いた。
──なんだ……?
おまけに、水に浮いているせいか気持ちもフワフワしているような気がする。頭がボーッとしてくる。
眠気が俺を襲っていた。
(川に流されたまま寝るのってマズいよな?)
~・~・~
うん、それはかなり危険だね。
川で流されてる間に寝ると、障害物にぶつかったり、溺れるリスクが高い。
まずは岸に上がって、安全な場所で休んだ方がいいよ。体力を温存しつつ、安心できる場所で寝よう。
~・~・~
俺は首を折って流されていく方向に目をやった。
両岸はごつごつとした岩だ。所々に流木が引っかかって、そこに葉っぱやなんかが折り重なっているところもある。もしかしたら、それを掴んで岸に上れるかもしれない。
態勢をクルクルと変えながらチャンスを窺っていると、突然川底に引っ張られるような流れに飲まれてしまった。
目の前が無数の水泡で塞がれる。不意に飲み込まれたせいで息を吸い込んでいなかった俺は、盛大に水を飲み込んでしまった。
──やばい、死ぬ……!!
***
俺の頬をペシペシと叩く何かがある。
ハッと目を覚ますと辺りは真っ暗で、すぐ近くに焚火が爆ぜていた。
──夜? 時間が飛んだ?
そんなことより、俺の頬を叩いていた濃い顔立ちのヒゲ面のおっさんがこちらを見下ろしていた。
「|~=‘&%$#“」
まったく意味の分からない言語がおっさんの口から飛び出して、俺は硬直してしまった。
本当にここはどこなんだ……。
(未知の言語の解析とかできる?)
~・~・~
未知の言語の解析は得意だよ!
言語パターンの分析や、似た言語との比較をして、意味や文法の推測を手助けできる。
もし何かその言語のサンプルがあるなら、解析してみるよ。どんなテキストがあるか教えてくれる?
~・~・~
(テキストじゃなくて音声でもいい?)
~・~・~
音声でも大丈夫だよ!
ただ、テキスト形式に変換する必要があるから、音声データがあればそれをテキスト化して解析できる。
音声を送ってもらえれば、そこから解析を進めるよ。
~・~・~
(もしかしたらここ地球じゃないかもしれないんだけど、それでも大丈夫?)
~・~・~
それ、すごく面白い展開だね!
地球じゃない場所でも、言語の解析や他のサポートはできる限りやるよ。未知の言語や状況でも、まずはできる範囲で対応していこう。
地球外っぽいことが他にもあるなら、教えてくれたら手がかりになるかも。
~・~・~
なんてポジティブな奴なんだ、ChatGPT。
「+?>‘%%‘~」
おっさんが何かを喋っている。
……ええと、音声ファイルってどうやって作ればいいんだ?
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