第82話

また二人、エレベーターの中。



何となく体を避けてしまうあたし。



それに気づいてそっとあたしの髪を握る。




「勝手に触んないで!!」





「…分かった」




(んへッ!?)



あまりに素直な返答にあたしはよろけた。





「…聞いたらいいわけ?」



あたしの髪からスルッと指を離して、そう呟く。




「…だめ」






「そっか」



(はれ?)



いつもの王子なら「んなの知らねぇ」とか言って強引に触るのに。



スカスカとしたこの気持ちはなに?



重い沈黙が流れた。




(このクソ王子、ほんっと意味分かんない!!)




ふつふつと怒りのような寂しさのような焦燥感に駆られる。




何だか不安定。



この王子、何考えてるの!?








「あ」



沈黙を破ったのはあたし。



ふと漏れてしまった声。






でも無反応。



沈黙は変わらない。



(こ…このクソ王子!!!怒)

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