第81話

「・・・」



唇を離して、こっそりと王子を見上げる。



顔は俯いたまま、瞳だけで王子を見た。



王子の両手はあたしの顔の近くに置かれたまま。



壁に曲げていた腕を伸ばして、あたしから少し遠ざかっていた。



今まで重なり合っていた綺麗な唇が開く。




「…ぁ」




チーン




やっと音を発したと思ったら、鉄の箱がゆっくりと沈んで浮いた。




グィーン



機械の唸る音が聞こえた瞬間…




カシャー!!!!




(ナッ!!?)



光ったライト。



「待ってましたぁ!!!大見出し!!!」



「これでうちらの株もあがりますね!!!」



きゃいきゃいと手を繋いで飛び跳ねる二人。



王子がウンザリを顔で表現していた。



(顔、顔)



二人を呆れた目で見る王子にそう伝えると



(見てねぇよ)



と「閉」ボタンを押した。




「ビックリスクープを撮られた感想を一言ッ!!」



持ってもいないマイクを差し出そうとした男が振り向くときには、もうすでに顔半分。





小声で「さぃなら~」と言っている。




ホント、この王子。


今までバレてないのが不思議…

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