第83話

エレベーターの階表示がどんどんと足されて着いた20階。



チーン



何も言わずにフロアに降りて何も言わずに去っていく。



(………あんた何それ……)



訳の分からない王子の行動に振り回されっぱなし。



エレベーター内でのあたしの発言。


『あ』も沈黙の中に消えて散った。



下りのエレベーターで最後に言いかけた王子の『ぁ』の行方が気になって、雰囲気悪い中、結構勇気出したのに。




見つめる背中。



振り向きもせずに消えていく。



少し曲線を描いた造り。



人のいないフロア。



みんな何やってんだろ…






カードキーでロックを解いて部屋に入る。



カードキーを差し込むと明かりがついた。




…カードキーを差し込むと……?




あれ?マミヤちゃんがいない。



恐る恐るバスルームを開けて中を確認する。



やっぱりいない。



あ。もしかしてカーテンの中に隠れてて「バァ!!!」とか…あり?



坊ちゃん、嬢ちゃんの考えることは分からんからね!




カーテン越しに窓を叩いて確かめる。




…いない。(ホッ)




ふと見たベッドの枕元。




達筆な字で『私も行って参りますわ(ハート)xxx』



なんとも古いキスマークが書かれている。



(普通に置いてあったしッ!てか「も」って、みんなどこに消えたんだ…?)




だんだんと怖さが募る。



一人で過ごすホテルの2人部屋ほど怖いものはない。



初めてのシチュエーションだけど、そう思った。



ベッドの下とかに仮面つけて片手にチェンソーとか持ってる奴いたらどうしよう!!!



なんとなくベッドの上に足まで上げて避難する。




ヴヴヴヴヴ




(Σァヒッッッ!!!)




.

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