第77話

「お待ちしてましたの。お話しがしたいと思いまして」



こちらへ、と招かれてあたしはベッドに腰を下ろした。




夫人がいたことに気がつかなかった。



充くんがドアを開けた時点で気付くべきだった。



充くんが抱えて夫人をホテルに連れ帰ったんだから。





さっきの王子、バレたのかな?



夫人の大きな目があたしを強く見据える。



バレちゃったのかなι?










ん?



前まであたし、王子の本性何でバレないのよ!だったよね?



今、あたし何て思った?!


バレて欲しくないとか思わなかった?!?!



あたしだけに本当の顔見せてて欲しいとか思わなかった??!!




頬を染めてハッと口元に手を当て、息を呑むと夫人がサッと瞳を落とした。



白い壁があたし達を囲み、後ろから差し込む夕陽で作られる、あたしの影が夫人を包んだ。



20階のこの部屋。



眺めは最高にいいだろう。



海に沈む太陽があたし達を照らす。





「その通りですわ」



口を開いた夫人が頬を染めて腕を摩っている。




(…は?)




「あたくし…実は…恋、してるんです…」




心底驚いて夫人を見つめる。




(聞きたくない…なんか聞きたくないι)





あたしは嫌な予感がした。



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