第66話
「号外だよ~号外~」
昔懐かしいチラシの配り方にあたしと充くんは呆気にとられる。
テニスコート周辺のフェンスに次々と集まってくるテニスウェアの坊ちゃま達。
びゅお~っと風が舞って一枚の紙がテニスコートの中に舞い落ちてきた。
充くんが拾う。
フェンス越しに「やっぱり…もうスタンバイされていらっしゃるわ」と口々に囁きあっているのが聞こえる。
今回こそは、身に覚えのない内容だけに恐怖感が募った。
拾い上げたそれを見て、充くんが「ぉぉ」と声を漏らす。
もしやお姫様抱っこの時に実はパンチラしてました!とかそんな事言う?!
バッと奪い取ってその紙を食いつくように見た。
『克穂VS充!
因縁対決?!
先日ある女性(M岡T亜稀)を巡って衝突した二人が宿泊学習、公衆面前全面対決!勝者にはその女性との熱いKISSが交わされるという過酷な条件を付けているらしい(12:30現在)(敬称略)』
な…
なんじゃこりゃぁぁぁ…
こりゃぁー
こりゃ-
コリャー…
……
やまびこと掛け合って驚きを表現する。
「大袈裟w」
ってそれで済ませないでよ、充くん!
新聞部、一体何考えてるの?!
キッと睨むと、慌ててそのチラシで顔を隠す。
(しょ…勝者とキスゥ?!)
その紙をふるふると震わせているとフェンス越しに空気がザワッと揺れた。
慣れたこの感覚。
王子の登場。
やる気なさ気に振り向く。
…う…そ…
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