第67話

真っ黒のテニスウェアに身を包んだ王子。



白のスーツも良かったけど真っ黒のテニスウェアもかっこいい。



茶色い髪、すっと上がった眉、くるんまつげの瞳、通った鼻筋に、形の綺麗な薄めの唇。


半袖から見える細めの固そうな腕。



(黒がいい。黒が!)



周りの嬢ちゃん達も同意見のようだった。




「…いつものことだけど何の騒ぎ?」



その王子に話し掛けられるあたし。



みんなの視線があたしに注がれる。



「…これ」



その紙を差し出す。




「は…?何これ」




…そうでしょう…


対決って…





勝者とあたしがキス…なんて。



もし本当の彼氏だったら



もし、あたしのこと



好きなら…そんなの嫌



でしょう?









「何で俺がダブルスなんかしないといけないわけ?」



「えっ?」


何?ダブルス?!




見せていた紙を覗き込もうとしたら、王子が表向き優しく奪い取る。



「つーか因縁?何これ」




『さぁさ!やってきました。佐伯原克穂VS山神充(敬称略)の因縁バトル!!!勝利は…M岡T亜稀の唇は…どちらのものに?!?!』




わぁっとフェンスの周りが沸き上がる。



どこから持ち出したのか今度は本物のマイクを片手にあの二人組がMC気取りで、ベンチの屋根の下にスタンバっている。





『さぁダブルスのお相手も、もうコートの上にいらっしゃいますね』







………え?




コートの…





上?!





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