第65話

それをぐいぐいと下に引っ張りながらあたしは更衣室を出た。



『まずは形から』



そう言ったエロ教師の発案で、ウェアをちゃんと着なくてはいけない決まり。



3つの選択肢全てをしたことがないあたしは、無難にテニスを選んだ。



履き慣れない丈のミニスコート。



引っ張る限り引っ張ってもピロンと重力に逆らって短く上がる。



そんな必死の抵抗に「おー絶景」なんて声をかけてくる男。



振り向くと爽やかな青色のテニスウェアに身を包んだ爽やかに笑う充くん。




「ど…ども」


少し体を強張らせて返事をする。



すっと隣に身を寄せるそのテクニックに「慣れ」ている印象を覚える。



そういや、いくら帰国子女だからって簡単にキスしてきたし…。



「ヤッたことあんの?」



「えっ?!?!」



唐突な質問にあたしは目をと口を丸くする。



「…テニスだよ?笑」



あたしの顔が可笑しすぎたらしく笑いながら付け加える。



(分かってた!分かってた!分かってたし!)




「したことなぃょ」



と虫の鳴くような声で返事をする。



…恥ずかしい…


どっちがエロか分からないじゃん…。泣



「まっ遊び程度だから大丈夫」



やっぱり女慣れしている充くんに肩を抱かれ、あたしはコートの上に降り立った。





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