第61話

貸し切りのリムジンバスが目的地に着き、あたし達はバスから降り立った。



みんなバスから降りて数十メートル先にあるホテルへワイワイと流れ出る。



荷物はボーイがいるらしくみんな手ぶら。



ホントにボン&嬢なんだから…。




そんな事を思いながらふらついている、乗り物酔い気味のあたし…



(…ぉえ…ぎぼぢわる…)




「何、つわり?」



周りが(有難迷惑に)気を遣ってくれて王子と二人きり。



要らん事を言う王子を横目で睨む。



「千亜稀、気持ちイくせに素直じゃないもんな」



またそんな事言ってる…このエロ王子!



……そりゃ…気持ち…いい…けどさ……



っておぇッ…



「…あんたねぇ!いい加減にしなさいよ!」



と言いかけて「あん」で終わった。



口元を押さえてうずくまるあたし。



ため息をついて前に立つ王子。



(優しくない!優しくない!こんな奴のどこが王子なのよ---!泣)




「ったく」



うずくまったあたしをそのままの態勢で担ぎあげる。




(ほぇ…)




大工さんが木材を運ぶように担がれるあたし。




(王子なら「お姫様抱っこ」が普通でしょーーッッ)




そのままの状態で歩いていく。


ジタバタとする元気もない。



…細いと思ってた身体。



抱え上げた時の力、凄かったな…



子供を抱っこするみたいにひょいっと簡単に持ち上げた。



背中もこんなに硬いんだ。



この身体に、あたしいつも抱きしめられてるの…?




…考えるだけで思い出す。



S王子との甘い日々。




「…暴れんな。」



王子が不機嫌そうに呼び掛けた。




(あ…ιあたし暴れる元気あったみたい)




.

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