第57話

「交際することになりました。なので見守っていただけると嬉しいです」



にこやかに言い放つ。


あたしの許可なく言いやがった。




「でも克穂様……」



チラッと周りを見渡して、他からの後押しを貰って言葉を続ける。



「その方は充様とも…」



その言葉も予想通り。王子はにこやかに微笑んだ。



「知っています。僕自身その場にいましたし、帰国子女の充くんにとっては単なるスキンシップ。千亜稀さんからも包み隠さず全て聞きました。僕が選んだ女性です。みなさんにも仲良くして頂きたい…」



キラキラと優しい視線を投げかけて、発言した女の子を見つめ、周りを見渡した。




ほぅ…



その場が甘くてゆったりとした空気に包まれる。




(気色わる…)



一人、胸糞の悪いあたし。



「それならしかたない…」と口々に言っているのが聞こえる。




(彼カノ公認だな)



くすっと耳元で囁く。



あたしはくすぐったくて身をよじった。



(あたしは彼女になるなんて言ってないッ)












人がはけた後、あたしの手の中にある写真を見ながら王子が呟いた。



「撮ったの誰だろうな…」



確かに。


こんなピンポイントな瞬間、通りすがりには撮れっこない。







「いやぁ!さすが乙女川新聞部!スキャンダラスは逃しませんよ~」



レストランから出てきたカメラを下げたアベック。



「学園の王子とシンデレラガールのスクープが今一番の旬情報」



そう言ってハッと口を紡ぐ。




あたしは思った。




(また変なのが現れた)




.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る