第54話

引き寄せられた王子の胸の中。



ゆっくりと聞こえる優しいリズム。



トクン…トクン…と王子を感じる。



「素直に貰っとけ」



箱をあたしの膝に置く。



えっ…



チュ



ふいをつかれたあたしにまたまた唇を重ねる。




「…まっこれで手をうってやるよ」



ベッと舌を出してあたしに言う。



(ぐはァッッ!!!)



その意地悪そうな顔に破裂しかけるあたしの心臓。




立ち上がる王子。



振り返り様、床を指差してあたしに言う。



「あ、それ片付けといて。おやすみ」




それ?



どれ?



(本日2回目)




指差された床の方へ首を捻る。



着地に失敗したプリン。



もちもちと床にこぼれている。




(あ…あんたが飛ばしたんでしょぉぉ~~!!!!)




ワォーーーーーーン……




またどこからか犬の遠吠えがこだました。




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