第45話

チュ



触れた唇。



あぁ!!唇守るの忘れてたぁ!!



気づいた時にはもう遅い。



「またそんな瞳で俺を見る」



口の中で笑う、あの笑い。




ただ見ていただけ!


ただ見ていただけですよ!!!




ぽぽぽと染まる頬に、また軽くキスをして


「ほら、帰るぞ」


と強気で言う。




「…誰かに見られたらどうすんのよ」



差し出された手を横目で見て、あたしは手に触れたい気持ちを押さえ込む。




「彼カノならいいだろ」



…また言ってる。



そんなに性欲強いわけ?



困った王子…。





「彼女って形になれば、さっきみたいに囲まれることもないだろ。充が勝手にキスしたって俺が言ってやる」





パチクリと瞬きをする。



今、裏の顔のくせに何か優しい提案しなかった?



「なんだよ」



ムッとあたしを見る。




「…見てたの?」



「そっ見てただけ」



フッと笑って

首を後ろに軽く曲げて腕を組む。



その偉そうな態度に、今あたしドキドキしてる。

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