第36話

全ては始業前に起きたこと。



今はもう6時間目。



なのに思い出すと体が熱くなっちゃうの。



優しく見つめられると、


あの王子顔に見つめられると、胸がきゅんと鳴っちゃうの



どんなに裏Sで、イジワルで、エロくて、強引で、猫かぶりな男なんだよっ!って自分に言い聞かせても今朝のあの瞳。



優しく撫でてくれたあの手のひら。




(くぅ!!!!)



机に、頭をコンコンとキツツキのように打ち付けた。





「村岡~。VIP待遇に浮かれてる場合じゃないぞ~」



教卓の前に立つ先生に大きな声で注意を受ける。




(ガッ!!そんな事大きな声で言わないでよ!!)



知らない人なんているはずないのに、「シー!!シーッ!!」とクラス中に聞こえる透かし声を上げた。



「図星らしいな」



にやりと笑う先生。


その発言へか、クラスの大半が笑いを漏らす。



クソ王子も「まぁまぁ」なんておだてながら、あたしの方をちらりと見て口ぱくをした。



その口と一緒にあたしも口を動かした。




…『あ』




…『ほ』







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