第37話

「アホッッ!?」



つい出てしまった叫び声。



「なんだ~?先生に向かってアホって言ったのか~?よし、じゃぁこの問題解いてみろ!」



ち・違います、王子の陰謀でッッなんて言い訳は絶対聞き入れてもらえない。



唇をかみ締めて、王子をきっと睨んで、涙交じりでチョークを握る。



「そんなに佐伯原を見つめるな」



先生の声にまたクラスが湧き上がる。



(違いますってば!)



王子を見るとククッと笑いをかみ締めている。



(今のアイツの顔を見て!!)



願いは届かず、あたしは黒板と見つめ合う。



(…全然分からない…)



心底恥ずかしくてマヌケなあたし。



先生に促されて席に着く。



虚しくため息をついて席に戻る途中、クソ王子と目が合った。



今度は「ばーか」と口パクしている。




(む、むかつく!!!)




同時にあたしは辺りを見渡す。



みんな黒板を見ていて、クソ王子の本性を見落としている!!




くぅと唇を噛み締めてチャイムが鳴るのをただただ待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る