第19話

チュ





さっきよりもとびきり優しい触れるだけのキス。



驚いて口元を押さえると

「欲しがってたから」と

意地悪そうに微笑んだ。




今までみた笑顔の中で

この笑顔が一番自然で彼らしく思えた。



あくまで意地悪な微笑みが王子笑顔の時よりも魅力的に感じられた。




「…そっちの方がいい…」



無意識に出てしまった気持ちを、はっとしまい込む。



手遅れは当然で彼の意表をついてしまったらしい。



一瞬固まって、あたしの肩に腕を乗せた。





「1年間ヨロシクね」




にっこりと微笑む顔。


さっきみたいに裏に何かを隠した笑顔。


彼らしい笑顔にあたしは視線を奪われる。



「どんなに逃げようとも俺、逃がさないから。


まずは千亜稀のアブナイ顔、拝ませてもらわないと」



頭に手を回してベッドに押し倒す。


あたしの上に四つん這いになる彼。



「ちょ…ちょちょっとッッ」



慌てるあたしにお構いなしの彼。



首元にかかる彼の吐息。



(ヤ…ヤバイってッッ)





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