第16話

彼を通り過ぎようとした瞬間、視界が大きく揺れた。



壁に押し付けられた体。


頭の横に彼の手が伸びている。


あたしに被さるように立つ白い影。



長い足があたしの進路を邪魔するように膝を壁につけて軽く曲げられている。




「…あんた名前は?」



近距離での妖しい吐息。



「さぁ知りません」



強気で返事をしてみせる。


本当はこんなに近くにある美形顔に心臓は破裂寸前だった。




「強ェ女…」




彼がフッと笑って言った。





その瞬間…



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