第6話後日談のような始まり。

久しぶりにたどり着いた私の故郷、エテール。

エテールは昔から水が綺麗な町として知られてきた。

それは四百六十五年経った今でも変わらないらしい。

近くを流れる川は未だに濁りのない綺麗な色をしていた。

この川の上流に町がある。

今は町の手前にある森の中。

この森も変わらなかったらよかったのだが。


「やっぱり枯れているか」


私がよく過ごした森にはムーン桜という花が咲いていた。

でも今は目の前に花などない。

枯れてしまった木々や草花があちこちにあるだけ。


私が旅に出て約十年ほど経った頃だった。

この大陸全体が猛烈な寒さに見舞われた。

その影響で草花や木々が枯れ、作物も凶作になった。

人々は困り果て、中には凶作の影響による紛争地帯まであるほどだった。


この町もきっと例外じゃないだろう。

雪こそ降らないものの、寒さは以前いた頃より増している、気がする。

長年旅をしていて感覚が鈍ったのかもしれない。

寒さにも慣れてしまった。

きっと人並みの感度ではないだろう。


「エテールか。やっぱりやめようかな」


そう。

私の旅の原因となり、私が天涯孤独となった一因。

それがこの町エテールなのだ。

できればこの町には寄り付きたくない。

一瞬だって考えたくもない。

それでも通らなければならない理由があった。


エテールは水が綺麗なだけあって飲み水も食べ物も美味しい。

そして私のカバンには果物少量と先ほど汲んだ水のみ。

正直、今にも倒れたい。

空腹でお腹が潰れそうなほど、私は飢えている。

飢えていたところで死なない体なのだから飢え死することはないのだが。

それでも一般的な人間と同じ作りをしているから力がどんどん出なくなっていく。


次に魔物や魔族と対峙したら私は傷を負うだろう。

こういう時、不死は便利で不便だ。

どうやっても死ぬ方法がないのに、厄介者が現れれば戦わないと自分が痛い思いをする。

結果、怪我をしても死なない代わりに、痛みが猛烈に残るのだ。


「早くご飯食べたい」


私がエテールに寄る理由はただ一つ。

食料調達だ。

四百六十五年経ったわけだから、私を知る人間は実際には存在しない。

でもあの町は伝統や昔の書類を大切にする文化があった。

旅をしていて文化を捨てる国はなかなかない。

私のことが文献に残されていれば気づく者もいるかもしれない。

そうなると厄介なのだ。

私が凶作の原因にでもされてしまえば、追放で済まなくなるかもしれない。

それほど凶作は深刻なのだ。


凶作がどれほど進んでいるかわからない以上、むやみに町を探索するのは避けたい。

だが、食料も底を尽きる。

実に頭の痛い話だ。

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