第7話後日談のような始まり。
「さて、どうしようか」
町の構造は流石に変わっているだろう。
きっと私の実家も跡形もないだろう。
そうなると、自分の知識だけではことが足りない。
頭を抱えながら森を彷徨っていると、茂みから足音が聞こえる。
それも駆けているような素早い足音だ。
「うわあ!」
茂みから姿を現したのは金髪の少年だった。
目はオッドアイ。
格好を見るに貴族だろう。
まあ、私も怪しまれないように貴族の格好をしているのだが。
少年は息を切らしながらこちらを見ている。
何秒見つめあっているかわからないが、その時間も終わりを告げる。
少年の背後から魔力を感じた。
それも一体ではない。
「下がって」
「え、でもお姉さん、戦える格好じゃ……」
私は後ろ丈の長いフリルスカート。
コルセットのようなものまでつけている。
それでも戦ってきた数は計り知れない。
死んでしまう人間とはかけ離れた身体能力の持ち主だ。
「いいから、下がってて。いいっていうまで、絶対に手出ししないで」
そう言って少年を自分の背後にやると私は魔力のする方へ体制を整えた。
次の瞬間、三体の魔物がゆっくりと姿を現した。
大きさを見るに、人を喰った。
弱くはないだろう。
空腹の時に三体、しかも力が強い魔物を相手にするのは不本意。
でも今戦わなければ私は……
私が一歩踏み出した瞬間、魔物は覆いかぶさるように襲ってくる。
その瞬間にスカートの裏にしまってある短剣を引き抜いた。
そのまま目の前の魔物をひと刺し。
残りの二体は正面衝突させた。
「まずは一匹。次はどっち?」
言葉が通じる相手ではないが、音としては通用する。
少年に気を向かせないために私が声を出す必要があった。
「言っても通じないよね」
そうして、もう一本の短剣をスカートから引き抜いて同時に二体を刺した。
魔物は弱点となる紋章を突き刺せば姿が消える。
長年旅をしていて気づいたことだ。
最初の頃は普通の人間だったら死んでいた傷をよく残したものだ。
姿を消した二体の魔物の紋章は見覚えのあるものだった。
魔物の紋章は使える主人によって異なる。
「あの紋章、どこかで……」
「お姉さん! 後ろ!」
考える余裕なんてくれなかった。
先ほど刺したはずの最初の一体目がよろめきながらこちらに襲いかかってきていた。
「空腹で腕が鈍ったな」
短剣をもう一度取り出そうとした時、私の頬を魔物の爪がかすった。
早かった。
読みは当たっていた。
一体目を最初と決めたのは明らかに魔力が違った。
一人や二人を喰った魔物じゃない。
少なくて四人といったところだろうか。
「これは倒した方がいいね」
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