第25話「素晴らしいね。貞操逆転した世界」

 この世界にもブラはある。

 ただ、前の世界とはブラに対する考え方が異なる。


 前の世界では、胸の形が崩れないようにとか、胸を隠したりとか色々な理由でブラが着用されていたと思う。

 思うというのは、俺がブラなんて付けた事がないから憶測になってしまっているので思うだ。


 だが、貞操が逆転した世界に置いて、ブラの役割は、胸が邪魔だからブラで邪魔にならないように抑える。ただそれだけだ。

 だから女性は胸を隠す必要がない。見られて恥ずかしい物ではないので。

 胸を見られても恥ずかしくないので、当然ブラを見られても恥ずかしくない。ブラの事をシャツの延長線上にしか考えていないのだろう。

 洋服屋等に行くと、ブラの衣類として分類は、下着ではなくインナーとなっている。

 


 いつも通りの朝。

 京のクラスで京と雑談をしつつクラスを見渡すと、女生徒が夏用の白い制服から、薄っすらと透けるブラが見えている。

 なんなら胸元を思い切り開けて、ブラチラを超えてブラモロしながら、手で扇いだりしているくらいだ。

 素晴らしいね。貞操逆転した世界。


 そして、俺の目の前に居る京も、制服から薄い水色のブラが透けて見えている。


「ん? どうしたの?」


「何でもないけど?」


「ふーん」


 今日は京のブラが特によく見えるから、思わずガン見をしてしまった。

 それに気づいた京に「どうしたの?」と聞かれて、適当な返事をしても京は気にしない素振りだ。

 だって本当に気にしていないのだから。

 このままガン見をしていても文句を言われないだろう。なんなら「ブラ変えた?」なんて、前の世界では大問題になりそうな発言をしたとしても、京は気分を害する事なく普通に答えてくれるだろう。

 素晴らしいね。貞操逆転した世界。(2回目)


「栄太郎、気づいてるか分からないけど、大倉さんみたいな顔してるよ」


 好きな人が目の前でブラを透けさせてるんだぞ! 見ない方がおかしいだろ!

 もちろんそんな事を言う度胸はないので、はははと笑って誤魔化すのが精いっぱい。


「あっ、呼んだ?」


 自分の名前が出て気になったのか、それとも話に割り込むタイミングをスタンバっていたのかは分からないが「どうしたの?」と聞きながら大倉さんが俺と京の間に立つ。

 

「別に、栄太郎が女子の胸に興味あるって話をしてただけ」


「いや、ちがっ……」


「あっ、そうなんだ」


 否定しようにも、上手く言葉が出せずあたふたと手をバタつかせ。

 そんな俺の手を、ガシッと大倉さんが掴む。


「それなら私の胸触ってみる。他の子よりも大きいんだ、私」


 俺の反応を待たず、掴んだ手をそのまま自分の胸に押し当てる大倉さん。

 触るなんてもんじゃない。押し当てられ、俺の右手は、大倉さんの胸を完全に掴んでいた。

 自ら大きいと言うだけあって、俺の右手には重量感を感じる。

 

 掴んだ瞬間に、体中を電気を走った気がする。

 大きく、柔らかく、そしてごつごつと硬く感じるのはブラにワイヤーが入っているからだろう。

 ブラを避けるように触れば、そこには女の子特有の柔らかいぷにっとした物があった。


 永遠にも似た一瞬。

 俺はおっぱいに夢中のあまり、ジト目で見てくる京の存在に気づくのが送れた。

 

「いや、違うんだ!」


 流石に事案かと思った。

 言い訳をしようにも、いまだに名残惜しく大倉さんの胸を揉んでいる右手が、大倉さんから離れてくれない。


「どうせ、私のは大倉さんと比べなくても小さいですよー」


 大倉さんの胸を揉む俺に対し、京は拗ねたように唇を尖らす。ただそれだけだった。

 こう「ヘンタイ!」とか言いながらビンタされるくらいの覚悟はしていたのだが、京からそんな様子は見られない。 

 そうか、貞操逆転した世界だもんね。男が女の胸を触っても事案にならないか。

 

「あーあ、良いなぁ~」


 そう言って、右手で空いている大倉さんの胸を鷲掴みする京。左手で自分の胸を揉みながら。

 京はしばし大倉さんの胸を揉んだ後、ガックリと肩を落とし、教室を出ていく。

 そして、俺はというと、いまだに大倉さんの胸を揉んでいた。離すタイミングを逃したので。


 ごめん。嘘ついたわ。

 だって揉んで良いと言われたら揉むでしょ?

 俺おっぱい童貞だよ? おっぱい初めて物語だよ?

 加減とか分かるわけないじゃん?


「あっ、島田君?」


「はっ!? 大倉さん、ごめん!!」


「あっ、気にしなくて良いよ。大きいと気になって、いっぱい揉んでくる女子って結構いるし」


 普段の俺なら「大倉さんにそんな友達居るの?」などと考えてしまっていただろう。

 だが、今の俺はそんな事を考える余裕は無い。だっておっぱいを揉んだのだから。


 離した右手にいまだ残る不思議な感触。

 初めてのおっぱいは、大きくて、柔らかくて、そして弾力と重量感があった。


(……大倉さんがおっぱいを揉ませてくれた)


 自分の教室に戻り、チャイムが鳴り教師が教壇に立ち授業が始まる。

 そんな教師の言葉を上の空で聞き流し、窓から外を眺める。


 空を流れる、双子山のような大きな雲。あの雲は大倉さんの胸よりも大きいだろうか?

 いや、大倉さんの方が大きいだろう。揉んだ俺が言うんだから間違いないさ。


(……大倉さんがおっぱいを揉ませてくれた!)


 大倉さんの「お」はおっぱいの「お」。

 大倉さんの「大」は大きいおっぱいの「大」。


 俺はこの日、おっぱい童貞を捨てた。

 素晴らしいね。貞操逆転した世界。(3回目)




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