助っ人 ※メリンダ視点
私は眠ってしまったクレディアを抱えて移動し、ベットに寝かせる。倒れている姿を見て混乱してしまったが、原因は魔道具の魔力供給部分に触ってしまい魔力が急激に減ったこことだと直ぐ発覚はした。
今眠ってしまっているのは単純な疲れもあるだろうが、倒れてしまった原因とも関係はあるだろう。どうしても不安になってしまう。
このままずっと見ていたい気持ちになるが話し合わなければならないことがある。名残惜しい気持ちを抑え、友人の元に戻る。
「待たせたわね」
お茶を飲んでいたネオサスとミーアに声をかける。
「もういいのか?」
「ええ。もともと多い魔力が多少失った程度よ。体に異常はないわ」
「そう言っているわりにはなんだか落ち着きがないけどね」
図星だが、親だったら誰だって心配するだろう。私の不注意が原因とも言えるのだから。
「私のことはいいのよ。それよりどうするの?」
気持ち良さそうに寝ている龍を見る。こうして見るとクレディアには負けるもののかわいらしいが、ここにいるだけで厄災だ。
私達は龍をどうするかについて話し合い、いくつか候補が出る。
一つ目はこの森から一番近い、ネオサスとミーアが住んでいる街へ連れて行くことだ。
これはデメリットしかない。子どもを連れ去ったと龍の逆鱗に触れる可能性が高いこと、薬の素材として一生遊んで暮らせるぐらい高額で売れる龍は狙われやすいこと。 このことからすぐに却下となった。
二つ目は怪我は癒えたので森に返すことだ。これも却下になる。
今いる辺りの森の深さは魔物が強い。子龍などまだ弱いので強い魔物に出会ったら即殺られてしまう。間接的に殺すのと同じで、少しは愛着が湧いているのだ。私達を襲うこともないし、親に似たのか性格は穏やかなので死なせたくはない。
三つ目は親の龍が子を探しに来ることを待つことだ。
これは中々良い案だとは思うが、私達が親の龍にどう思われるのか分かったものではない。理性的であれば良いものの、そうではなかったら私達の命が危ない。一旦保留となる。
四つ目は私達が親の龍まで赴くことだ。だが、龍の住処とされているところは空気中の魔力が濃い。 龍の持つ魔力が溢れているからだ。
そのせいで住処に近づくにつれて魔物が強くなっていく。私達三人は剣の腕にそれなりの自信があるが、流石にきつい。人数を増やせば行けるが、このことはあまり人に知られないほうがいいため却下となる。
四つの候補が出たが結局、三つ目以外はなかなか良い方法が見つからない。
ここで一つ思い出す。
「そういえば、スノエさんがこの森の龍と知り合いだって、むかーし、言っていた気がするわ」
スノエさんというのは私が昔からお世話になっている人だ。薬屋を営んでいて、三人共顔馴染みがある。
ちなみのこの家はスノエさんのもので、借りさせてもらっているほどだ。
私がスノエさんにお節介をやかれていたころ、色々な話を聞かされていた。そのときにふと、感慨深い面持ちで言っていた。
曰く、太古の龍が怪我をして動けなかったところを手持ちの薬で治療し、酒を一緒に飲む仲になった。
そのことを二人に話した結果、スノエさんに頼ることを決めた。これが本当なら良い案が出るかもしれない。
決めてからは行動は速く、街へ向かいすぐ連れて帰ってきた。
会って早々愚痴を言われ、大量の酒を買うことを約束されてしまったが、店が忙しい中来てくれたのだ。そのぐらい準備しよう。
どのくらい買わされるか分からないが、三人で割り勘すればたぶんなんとかなるはずだ。
結果として、お金の犠牲はあったものの小龍のことは解決した。
解決方法は単純で、ネオサスとミーア、そしてスノエさんの三人で親の龍の元へ届けに向かった。戦力について心もとなかったが、スノエさんが頑なに大丈夫だというのでそれを信じた。
日が落ち、暗くなったところで無事皆は帰ってきた。友人達は疲れ切った顔で口々に死ぬかと思った、もう行きたくないと語った。
その手には小龍を抱えていて、スノエさんがいなかった。不肖の息子だがと返され、スノエさんは龍と酒で夜が明けるまで飲むらしい。
外はもう暗く、魔物が活性化するので二人は泊まっていった。
龍は私が預かることになった。危険はないと思うし、街で狙われるよりは森で生活するほうが良い。
そして二人は朝早く、仕事があるので出ていった。よほど急いでいたのか、朝食を食べる暇なく慌ただしく行った。
こうして一匹の新しい龍が加わった生活が始まった。
*
私の生活に新しく一匹が加わった。
起床後、訪ねてきた二人は既に家におらず、二人が連れて来た生き物はいた。
気持ち良さげに寝ていて、遊び相手と癒やしができて毎日が楽しくなった。
体が成長していくにつれ、行動範囲が増えた。私が色々なものに興味をもっていたのを見て、母は部屋からよく連れ出してくれるようになった。
高いところを見てみたいときに声を出したりすると、私を抱きかかえて手伝ってくれる。
部屋を眺めていると植物の絵が書かれた本が視界に入った。文字ではなく絵だったので、多少意味が分かるかもしれないと思って母にとってもらったが文字ばかりだった。
望んでいたものと違ったので残念だったが、私が本に興味をもったことで後に絵本をもらった。絵本はないものだと思っていたので嬉しい。
母はよく絵本を読んでくれた。ゆっくりと優しい声ということがあり、途中で眠ってしまったことが何回かあったが、努力のおかげか意味と文字が分かるようになった。
ちなみに絵本の内容は勇者が魔王を倒しに行くという物語だった。途中で魔法を使う場面があり、この世界に本当にあるのかなっと思っていると、母が雨の日に洗濯物を風で乾かしていて事実だと判明し、その日ははしゃいだ。
そして、絵本の中で最強の種族として登場している龍がこの家にいる生き物と同じらしい。
絵の龍は大人なので最初は気付かなかったが、母がどちらも同じ言葉を使っていることから同一だと知った。
それまでは『りゅう』という言葉が名前なのかと思っていたので驚いたものだ。
名前は付けないのかと母に聞いてみたらネーミングセンスがないらしい。母に「クレディアがつけていいわよ」と言われるが、私もセンスがない。
だから今まで呼び慣れている『りゅう』の言葉の最後だけ変えて『リュー』と言う名前にした。
安直だが、中々に良いのではないか。
話は戻り、魔法に関してだ。
この世界には魔法がある。憧れから試しに母が呟いた詠唱の真似をしてみたことがあったが、はっきり発音出来ていなかったのか、そのときは何も起こらない。
私はどうしても魔法を使いたかったことから、片っ端から本を読んで魔法について書かれたものがないか探した。だが、長い時間をかけて全部読んだにも関わらず、見つからない。
母に聞くのが楽だと思うだろうが、「危ないから駄目よ」と怒られたのだ。だから本に頼ったのだが、労働の無駄になった。
そのことでふてくされていると、母がどうしたのかと聞いてきた。母にはこれまでに隠し事が通じないので正直に話すと、苦笑しながらなぜ危ないのかを説明してくれた。
私は生まれながらに人より魔力が多いらしい。そのため大きな魔力を制御するため、事故が起こらないように訓練をしなくてはならないのだとか。
だからその訓練をとばして先に魔法を使ってはここら一帯が更地になる可能性があるので駄目らしい。
思ってた以上に怖い理由だったので、私が魔法を使うことについては当分諦めることになった。
ではリューはどうなのか。
魔法を使えないにしろ、火とか吹けないかなっと期待してじっと見る。「ガゥ?」と顔を傾けただけで、ただただかわいいだけだった。
他に特出して言うことといえば、スノエというお婆さんが家に訪ねるようになったことだ。
私は覚えていないが、母の出産を手伝ってもらったらしい。
仕事の薬屋がこれまでにないぐらい忙しくなってしまって来る機会がなかったが、ようやく落ち着いたことから訪ねられるようになったのだとか。
私はスノエおばあちゃんと呼び、勉学について教えてもらった。
薬屋を営んでいるということから植物について詳しい。前に見つけた植物の本の読めないところや分からないところを分かりやすく教えてくれる。
そのおかげでこの世界の知識が溜まってきた。母はあまり勉学が得意ではないので、スノエおばあちゃんばかりに色々と聞いていたら、母が拗ねたのは誤算だった。
私の周りにいる人は静菜の頃と違って優しい人ばかりだ。そのおかげで幸福な時間を過ごすことができ、そんな時間はあっという間に過ぎ去っていく。
そして長い月日が流れた。
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