第3話

 委員会メンバーのしたことは、遊びのお誘い。それだけ。妖に対して「ボードゲームしませんかー?」と誘ったのだ。どう考えても正気の沙汰ではない。

 ところが意外にもすぐ反応があった。城を覆う暗闇から、数体の妖が現れたのだ。委員会メンバーは簡単に遊び方を説明した後、数種類のボードゲームを置くと「また持って来ますね。」と、飄々と帰っていった。


 昔から妖たちが登場する話は往々にして、学校が舞台の場合が多い。委員会メンバー曰く、妖達は子供好きの勉強家に違いない。ここまでたくさんの妖話が伝承しているということは、それだけ人が好きでかまってる証拠だ。そして元来、″化かす″、″騙す″、″嘘をつく″を好む妖達にとって、″賭け事″は最高に楽しいはず。よってゲーム好きで、仲良くなれる!という理論だそうだ。


 次の日も訪れると委員会メンバーの思惑とおり、昨日より多くの妖が、もっとゲームを寄こせと待ち構えていた。心なしか、城を覆う暗闇も薄れてきたようだ。

 三日目には中に入ることができ、ぬらりひょんとTRPGで盛り上がるまでになっていた。中にはボードゲームだけでなく、中央図書館から持ってきたらしい″雨月物語″を嬉々として読んでいる妖もいた。

 四日目になると委員会メンバーは、剥離や黒ずみで修復予定だった天守閣の漆喰壁が綺麗になっているのに気づいた。廻縁・高欄にあった腐食や退色も、どこにも見当たらないのだ。もしやこれは妖の力なのか。

 聞くと、妖達は化かすことで力を得るが、ボードゲームは双方で化かし合うため、相乗効果がすごいらしい。内に入らずあふれた力は、近くにある物に反映するのだとか。その中でも特に力が得れる″文字の物語″、TRPGや怪異小説はたまらない好物だと。

すると、委員会メンバーはそろってにっこりし、「じゃあ、どんどん作っちゃいましょう。」と当たり前のように答えた。

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