第2話

 十月になると、皆が仮装して街にくりだし掛川城下は夜店で賑わう。飲食だけでなく、占いや仮装グッズ販売などもあり、はしゃぐ狐面の子供や、得意顔で散歩する羽をつけた犬がいて、眺めるだけでも楽しい。他にもアーティストの音楽LIVEや街歩き謎解き、変わったところだとDJの音楽に合わせた心臓マッサージ体験や、Minecraftで再現した高天神城など、催しが目白押しだ。

 その中でも一番の見どころは、なんと言っても今夜——最終土曜の夜に行われる圧巻の百鬼夜行だろう。人と妖の区別なく、踊れや騒げと、太鼓を打ち下駄を鳴らす。筆頭の大天狗が羽団扇を振るえば火球が舞い踊り、無数の魑魅魍魎が跳梁跋扈するのだ。

 どの土地にも妖の類いはいるが、ここまで人と馴染んでいるのは掛川市の特徴と言えるだろう。しかし、人と妖で協定を結び共存するようになったのは、ここ最近の話だ。


 数年前の夏、妖の総大将″ぬらりひょん″が掛川城天守閣を気に入り、仲間達と占領し隠してしまった。城があった場所はすっぽりと暗闇が広がり、光も通らない歪んだ空間になった。もちろん取り戻そうと、役所や観光協会、市民団体も頑張ったが、話は通じずのらりくらりと交わされ続けた。妖達はたびたび人に化けては商店街でいたずらをするので、苦情の声も膨れ上がった。秋の祭典では酒を飲んで大暴れ、怪我人も出るし引越す市民もでてきた。

 そんな時、ある企業の代表取締役が名乗りを上げ、有志数名と共に向かい、たった四日間で掛川城を取り戻したのだ。

 それが今夜の催しを取り仕切っている面々、「掛川百鬼夜行実行委員会(以下、委員会メンバー)」だ。

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