第2章 ERIS-林檎
1
母さんはわかってくれない。
なんで俺が家出したのか。
なんで俺が学校に行かなくなったのか。
母さんは話を聞いてくれない。
塾の先生はこんなにも俺のことを考えてくれるのに。
だから父さんにも逃げられるんだ。
「おはよう」
「うん、家よりずっと」
霧由さんは俺の塾の数学の先生。
誰よりも俺のことを考えてくれる。
家を飛び出して塾の前で立ってたら、鍵を渡して俺を匿ってくれた。
塾が終わってから、霧由さんは急いで帰ってきてくれた。
ご飯も作ってくれて、お風呂も使わせてくれた。
「ねえ、俺迷惑じゃない?」
今日で一週間。
俺は学校にも行ってないし、家にも帰っていない。
「迷惑って思ったらどうするって思った?」
「家に連絡するとか、警察に連れてくとか」
「先に言っとくけど、君が自主的に僕のところに来たって主張しても、もう俺は君を誘拐したことになってる。家に言ったら警察呼ばれるし、警察に連れてったらその場で逮捕だ」
「なんで?」
「それが未成年てことだよ」
え、ウソ。
「それでも置いてくれてるのはなんで」
「君が困ってるからだよ」
自分が捕まるかもしれない危険がありながら、俺をここに置いてくれるのは。
わからない。
わかんない。
「俺、そんなに困ってた?」
「うん、困ってるから助けただけ」
こんなに俺のことを考えてくれる先生に何か恩返しがしたい。
そう言ったら、服を脱ぐように言われた。
言われた通りにしたら、霧由さんも服を脱いだ。
そのまま俺を抱き締めてくれた。
あったかい。
シャッター音がしたけどどうでもいいか。
踏破月刊罪悪/僕と。 伏潮朱遺 @fushiwo41
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