11月18日(月)

「ねえ、これはどうやって組み立てるの?」

「ここを引っ張ると……、ほらできた!」


 涼しくなると、1ヶ月に1回キャンプをするのが私とお母さんの共通の趣味。

夏場は虫が多くて怯えないといけないから、虫が少なくなる時期からしか始めない。


 新しいギアを買ってみたと、ウキウキのお母さんと一緒に、テントを組み立て、タープも貼ってストーブに火をつける。

コーヒーを淹れて小休憩。


「今日は何するの?」

「焼き芋!」


 大きなさつまいもをふたつ持って嬉しそうな顔をしている。

はしゃぐお母さんを見るのは好きだ。私まで楽しい気分になれるから。


「夜はもつ鍋にしましょうねー」

「はーい」


 焚き火台に着火剤と薪を焚べて火をつける。ぱちぱち、と聞こえてくるこの音も、大好き。


 サツマイモを水でキレイに洗って、水で濡らした新聞紙でサツマイモを1本ずつ包む。新聞紙の上からさらにアルミホイルで包む。アルミホイルは隙間がないようにきっちりと、シワをつけるように包む。

こうすることで、直接高熱に当たる部分が減って、アルミホイルが溶けにくくなるらしい。

火の近くに置いて待つ。


「3、40分かかるからゆっくりしててね」

「海の近くに行ってもいい?」

「風も強くないし、うん、いいよ。気をつけてね」

「わかった」


 チェアと、娯楽グッズが入ったリュックを持って、テントから少し歩いた先の浜辺へ向かう。


 浜辺にチェアを置いてリュックの中から本とヘッドホンを取り出す。スマホに繋げて、最近気に入っているプレイリストを流して、本のページを捲った。


読書好きのクラスメイトから勧められた本だ。同じ作家さんが好きなことが判明して、その中でも選りすぐりの三冊もお勧めされた中の、その子が特に気に入っているという一冊を読む。


 映画化もされたらしく、サブスクで今配信されてることも教えてくれたので、夜はお母さんと見るつもりだ。


「読んじゃったら、映画楽しめないかな」


 いや、文章で想像した時よりも映像で演出が加えられた方がより面白く感じるかも。

楽しみだな。


 アイドルを目指す女の子たちの話しで、この子たちには借金があるらしい。その借金を返すために“法律のない島”という都合のいい場所に連れて行かれて、デスゲームをするお話。


意外な一面。


───


「マナ?」

「ごめん、ぼーっとしてた」


カチカチ音を鳴らす方向を見ると、もう7時、外も暗い。


「今日の夜ご飯はもつ鍋!」

「もつあるの?」

「パパとした時に食べきれなくて冷凍してあったんだよね」

「そっか」


 あの子、元気かな。本の感想、まだ言えてない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 15:00 予定は変更される可能性があります

明日の空は何色 I藍ス @LOVE_me

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ