11月16日(土)

「マナ」

「ん?」

「まだ起きてる?」

「うん」

「大丈夫?」

「うん」


 あと1時間もしたら、日付が変わるかな。

まだ心臓の音が耳まで届いている気がする。


───

 今日のお昼過ぎ、私は本を読んでいてミクは2階で家事をしていた。


急いだ様子の冨田さんがミクに伝言を託して、ミクがドタバタと私がいる部屋に入ってきた。

中からも、外からも見られている、守られているという安心から警戒心が薄れて、普通にミクが入ってきたことを確認した。


 ミクの顔は必死で、怖がっていた。

そして私に言った、


「近くで爆発がするみたいだからクローゼットに来て」


 意味は伝わった。

ミクは私の腕を強く掴んで少し広いクローゼットに、ふたりで入った。

ミクは震えていた。

いや、私が震えていたのかもしれない。

どちらの体の震えかわからないけれど、ずっと、ずっと震えていた。


 近くで爆発があるってことは、この家が被害に遭うかもしれないし、被害に遭ったらどこに逃げればいいんだろう。スマホで調べたらいいかな、ミクの机の上に置いてきたんだった、まだ間に合うかな間に合わないかな。

どっちにしろ足がすくんで立ち上がることができない。


 窓から離れているところとはいえ、ここまで銃声が微かであるけれど聞こえてくる。


「伏せろぉぉぉ!!!!!!!」

「「!!!!!!!?」」


 外から声が聞こえて頭を守る姿勢をとる。


ドッ!!!!!!!!!!

ゴォン!!!!!!!


「キャー!!!」

「んぐっ……!!」


 近くで起こったであろう爆発の事実と、爆発音のせいで声が漏れてしまった。

頭を守るのに必死になっていたせいで、耳にどデカイ爆発音が飛び込んできた。


この家に被害がありませんように。クローゼットから出た途端に部屋が半分無くなってる、なんてことが起きてませんように。冨田さんが無事でありますように。


この家の周りのゾンビがみんないなくなってますように。


 私が震えながら祈っていると。


「大丈夫か!!?」


 勢いよくクローゼットの扉が空いた。


窓の外の太陽が眩しくて、すぐには部屋の状況が掴めなかった。明かりが間に飛び込んできて眩しかった。突然の大声に、脳の処理が追いつかなかった。


自分よりも、隣で肩を震わせていたミクのことが気になった。


「私は、大丈夫です……」

「ミクも……」


 ミクの頬には、涙が伝ったあとがあった。


───


 部屋は無事。

窓にヒビが入ったくらいで、建物に異常はなく、冨田さんも無事だった。


「ミク、大丈夫?」

「マナが隣にいるから、大丈夫だよ」


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