11月15日(金)

 また雨。

昨日は曇りで夜には少し月が見えていたから、晴れると思ったのに。

 

パパパパパ

ドドドッドドドッ


 相変わらずの銃声。


「洗濯物これで全部かな?」

「うん」


 音がうるさいうちに、洗濯機を回そうとミクが提案した。

冨田さんがずっと見張ってくれているから、できたこと。

今日も1階から外の様子を、全体的に見てくれている。早朝から見張ってくれているらしく、私たちが朝ごはんの支度をしている時に声をかけた時には、仕事モードの顔つきだった。


 今日も本を読む。

昨日は20ページも読んでなかったのか、読み直そうかな。


「ねーねー、今のところどんな話なの?」

「スターと結ばれた幸せな女の人の話で」

「うん」

「今はね、最愛の夫に先立たれた悲しみと世間からの憎しみに耐えつつも息子を育てなきゃいけなくて」

「うんうん」

「母親っていう、女性の強さが伺えるね」

「ふーん」


 説明が苦手な私の話では、ミクには伝わらないと思うけど。


「また聞くからどんなのか教えてね」

「わかった」


 伝わらなかったかな。

今の段階では普通すぎて、面白いところがないから仕方がないんだけど。


 これまでにも、ミクには何度か私が読んだ本の内容について話したことがある。

拙い説明も最後まで聞いてくれて、質問もしてくれて、最後には納得して読みたいと思ったら借りていくし、私の話で満足したらミクなりの感想をくれる。

読んでみたい。と言ってくれた時は少し嬉しい。


「マナはさ、誰かに説明するの得意だよね」

「え、苦手な方なんだけど」

「そう?言葉が綺麗だし、わかりやすいよ」


 言葉選びなんて、選んだこともないけれど。

本を読むのが好きなだけで、読書感想文とか手紙とか自分で書いたりすることは苦手で、だから言葉にして伝えるのは苦手だと思ってた。少しでも私が思ったことが伝わってるなら、嬉しいな。


コンコン


「はい」

「良いかな?」

「どうぞー」


 冨岡さんが使わない白い布はないかと聞いてきた。大きいものがいいらしい。

布はないけれど、着ない服ならある。と答えると家の高い場所に掲げて欲しいという。

生存者がいる場所の把握だろうか。


「この上の屋根に?」

「いや、窓から出す程度でいいんだ」

「じゃあそこの窓のすぐそこに釘が打ってあるからそこに吊そう」


 昔、スダレをかけるように取り付けていたらしい。

今となっては何も吊るしていないのでそこに3着白い服を吊るした。


 すぐ後に、冨田さんの無線から

「生存者宅確認」


と声が聞こえてきた。


「これで、外からもみてもらえるから」


 その言葉を聞いて、私とミクは喜んだ。

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