11月14日(木)

「昨日、本を読んでいたみたいだね」

「はい」

「何の本?」


 夕食の時間、今日はパスタ。蝋燭に火をつけて、こっそりとお腹を満たす。

1日の中で1番の安らぎの時間かもしれない。


「まだ途中ですけど、面白いですよ」

「読み終わったらミクに教えてね!」

「読まずに楽しもうとしてるな?」

「バレちゃった」


 クスクスと笑い合う。

本当なら、ワハハって笑い合ってもっと話に花を咲かせるんだろうな。


 脅威に囲まれた今は神経をすり減らしながら過ごすしかない。

正直、読書も内容が入ってきているかさえわからない。前はもっと集中して読んでいたと思うんだけど。


 ミクは外の騒音も気にすることなく、ぐっすり寝ていたようで今日は隣でずっと動画を見ていた。

過去の配信や動画をたくさん見ることができて楽しいと言うが、更新が止まった今は、過去動画を見終わった後に寂しさを味わうのではないか、と思ったりもする。

読書をする私にも同じことが言える。


「ここにはどのくらいの食料があるんだ?」

「2人で1ヶ月は持つかなってくらい?」

「そうか」


 生きていかなければならない生命が増えたおかげで、食料の減りを心配しなければならなくなった。


 人間は、食べ物がなくても3週間程度生きることができる。食べ物からのエネルギーが得られなくなると、人間の身体は皮下組織に蓄えている皮下脂肪をエネルギーに変えるように働くから。だから食べ物がなくても、3週間程度は生きることができる。

が、水がない場合は3日間までも届かず、72時間で身体が水分不足に陥り、体内の水分のうち約6%が減少すると体内での水分の調節ができなくなり、約10%減ると危機的状態に陥り、約20%失うと死を招く。


「さすが冨田さん!」

「調べればこれくらいのことは出てくるさ、俺の分は明日から作らなくていい」


 所持品の中に少しばかりの食料があるからと。

かといって死んでもらっては困るので、3日に1回1食、一緒に食卓を囲むことにした。


 食事を終えて、冨田さんは1階に、私たちは3階に別れて入浴を済ませて、寝る体勢に入った。


「まだ眠くないから、外見張っておくね」

「早めに寝てね」

「おやすみ」

「おやすみ」


 ミクはまだ元気が有り余っているらしく、カーテンの隙間から外を眺めている。

私はというと、パスタをお腹いっぱい食べて心地良い睡魔が襲ってきた。このまま身を預けて眠ってしまおう。

明日も引きこもりの生活だけど、いざという時のためにしっかり眠らないと。


 

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