11月13日(水)

さーーーーーーーーー

ぱぱぱっ

ドドドッ


 雨のせいで外の音が聞き取りづらい。

今日は昼過ぎまで寝ていた。銃声は耳に入りづらかったし、何かあれば冨田さんが助けてくれるという安心感から、私もミクもぐっすり眠れた。


ご飯作るの忘れた!と焦っていたミクだったが、昨日の夜はオムライスにグラタンに、冨田さんに料理の腕を褒められたミクが気を良くして、たくさん作ったおかげでみんな今までお腹が空かなかった。


「ここ周辺にゾンビがまだいるみたいだから、2人は部屋から出ないように」

「「はーい」」


 無線か何かを使って外部と連絡を取ってるのかな。

1階の玄関、勝手口、窓の近くを順番に見張ってくれている。おかげでこれまで以上に安心して過ごせてる気がする。


「頭痛いから寝てるね」

「うん」


 気圧のせいかな、ミクがベットに戻っていった。

私も見張ってなくていいし、本でも読もうかな。


 買ってから触ってなかった本をたまたま持ってきていた。

最近好きになった作家さんの3作目で、私が生まれるよりも前に出版されたもので、5件くらいの書店を回ったけど、古いものだからかどこにも置いてなくて、フリマサイトで購入した。運良く、状態も良い初版本を手に入れることができた。


「真実」というタイトル。

老若男女を虜にしてきた大スターの元妻の話で、若くして最愛の夫を亡くし、女で1人で子供を育て、息子をスターに育て上げた母親の生きてきた人生の真実が語られる。

面白そう。


 高校受験の時に、勉強から逃れるために始めた読書。学校の休み時間や家での自由な時間、寝る前にも必ず読んでいた。

高校に上がってからも、休み時間はもちろん登下校の電車に乗っている間にも読書をしている。


本は良い。知らないことを知ることができるし、世界中どこへでも旅することができるし、モテモテイケメンにも、絶世の美女にもなれる。

うるさい現実から夢のような世界に行けるコスパ良しの航空券みたいなものだ。


 この事態が収まったら、ゾンビものの小説でも読んでみようかな。

映画も見てみようかな。あとで調べよう。

 

今はこの小説の真実に近づきたい。


 厚い表紙を開いてタイトルの書かれた1ページ目をめくる。ページをめくる時の紙の音が好き。特にタイトルをめくる時は、ドラマや映画のオープニングのようでワクワクする。


 雨音と、ミクの寝息と、遠くの銃声の聞こえないくらい本の世界に入り込んだ。

途中で喉が渇いてキッチンに降りる以外に、部屋から離れることはなかった。

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