11月11日(月)

 結局陽の光が差しても眠気はこなかった。ミクは外の騒がしさに目が覚めたみたい。まだゾンビの姿も見られたので、ミクは3階の自室の窓から外の様子を伺う。私は、1階に続く階段の玄関が見える位置でシャベルを構えていた。通話を繋ぎイヤホンをしてお互いの見えている情報を共有することにした。

 即席で考えたにしては、いい感じなのでは。


「今のところ、こっちにきてるゾンビはいないよ」

「わかった」


 この言葉を聞いて安心したいんだけれど、玄関とは真逆、階段の後ろに位置する庭につながる大きい窓の方から音がする気がする。


ザッ……ザッ……


 足音かな……?窓を叩く音にしては軽すぎる。


「ミク、庭に何かいる気がするの」

「庭?」

「うん、足音みたいなのが聞こえるような聞こえないような……」

「じゃあ、ミクが庭側の窓まで行くから待ってて」

「気をつけて」


 ミクの部屋を出て、階段絵向かう廊下の突き当たりに小さな窓がある。

そこからなら、ちょうど庭を真上から見渡せるだろう。


「あ」

「なに?何かいた?」

「……」

「?ミク??」


 ミクから返事がこない。急に庭に出て行ったり返事してくれなかったり、なんなの。

なんだかムカついて少し大きな声で名前を呼んだ。


「ミク……!!何かあった?何かいるの??」

「ごめん……!自衛隊の人がいて…草の中に隠れてるみたいなんだよね」


 怒りを帯びた私の声に驚きながら答えてくれた。草色のような服が見えるような、そうでもないような。でも確実に何かが草の中に潜んでいるらしい。


「そのまま見てて、庭の窓まで行くから」

「わかった、き「気をつける」」


 ゲームだったら、画面から全体が見えてて素早くキャラクターを動かして状況を把握できるんだよな。

現実だと強張った体が重くて想像通りには動かないので、慎重に動こう。


 庭が見える大きな窓の前に積み上げたバリケードの隙間から3階の窓からちょうど見えるであろう、草を見つめた。

 

キラッ


 何かが反射した。ヘルメットかな、銃かな。何かが太陽に反射した。

声をかけてみるべきか、でも撃たれたら困るな……。


「どう……?」

「何かいる、さっき何か反射した」

「……」

「動いた」


 草から頭だけ出して、ヘルメットを被り直している迷彩服の


「自衛隊員だ」

「ほんと……!?」

「でも、」


 怪我をしてるみたいに見える。


「ちょっと、そこの人」

「!?」


 迷彩服の人は私に驚いて銃を構えた。

 

「生存者です、やめてください。早くこっちきて」


 窓を人が1人入れるくらいだけ開けて怪我人を招き入れた。


「軍人さん、怪我してる。そっち行くから」


 ミクの返事を待たずに怪我人を3階の部屋まで連れて行った。


「大丈夫ですか!?」

「大丈夫、すまないね」


 男性隊員はふくらはぎを抑えて額に汗をかいていた。


「噛まれてないし、安心して。流れ弾に当たっただけだから」

「この中身、使ってください」

「助かるよ、ありがとう」


 ミクが救急箱を差し出すと使えそうなものを取り出して、慣れた手つきで処置をし始めた。


「はぁ……」


 深いため息と一緒に、体が重くなって横になるしかなかった


「マナ!?」

「大丈夫か!!?」


 体が、動かせない、な


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る