11月8日(金)
おかしい。
「どうしたんだろう……」
銃声が、聞こえなくなった。
昼食を食べ終わったころに気が付いた。さっきまで聞こえていた「ドドド」「パパパ」の音が消えた。
テレビやSNSではまだ情報が回ってきていない。
「しっ」
ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
ぶーーーーん
ヘリコプター??
「空からどうなってるか見に来たんだよ、今からニュースにしてくれるんじゃないかな」
ミクがマイチューブでライブ中のニュースチャンネルを見せてきた。
ニュースキャスターがカメラに向かって一生懸命に今の東京の状況を伝えてくれている。
この人寝てないのかな。そう思うくらい、画面越しにも伝わるくらい、顔色が悪いし身なりが乱れてる。可哀想に。
「映った!」
「……」
「……」
移ったのはあちこちで火が付き、煙が上がって、人が倒れてて、終末が似合う光景だった。
絶望だ。生放送だからモザイクもできない、亡くなった人がダイレクトに目に入ってくる。
「トイレ……!」
私は急いで部屋を出てトイレに駆け込んだ。昼食が全部出てきた。
しばらくお腹がすくこともないだろう。
ショッキングな映像、初めて見た。
渋谷の駅のすぐ前、スクランブル交差点にひとごみができていた。人ゴミ。
迷彩服を着た人も見えたな。日本の自衛隊って、日本って戦えるのかな。
そもそも、十分な武器が備わっているんだろうか。
戦争をしない国、日本。軍隊を持たない日本。銃の種類なんて知らないし、日本の自衛隊がなんの武器を持っているかも知らないけれど、戦争を、武器を持たないことを選んだこの国に、脅威を殲滅できるほどの武器があると、思えない。
嘔吐物と一緒に、疑問も吐き出された。
「マナ、大丈夫?」
「うん」
扉の前でミクが水を持って、待っててくれた。
嘔吐物は出し切ったけれど、世の中に、この国に対する疑問のせいで頭が痛いような気がする。
本当に、元の生活に戻れるのかな。また、お母さんと一緒にご飯食べられるかな。
いつになったら、助けが来るんだろう。
「ニュースしばらく見てたんだけど、アナウンサーの人もなにも話さなくなっちゃって……」
「そっか」
だろうね。
ほとんどの視聴者が私みたいに吐いたんじゃないかな。
「銃声が止んだのは、武器が無くなったから、らしいよ……」
「は?」
「SNSで書き込み見つけたの」
SNSのポストにはこう書かれていた。
日本の自衛隊の武器の保有数は、どの国よりも少なく、武器の種類もどの国よりも劣る。よって、銃よりゾンビの数が多かった時点で東京に市民は助からないだろう。
最悪の場合、東京内にゾンビを集めて東京ごと焼き尽くすかだな、他県にまで及んでは日本は壊滅するしかないだろう。
「……」
頭が痛くなってきた。
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