11月7日(木)

 昨日の夕方に一瞬だけ晴れただけで、今日も雨が降っている。

空もどんより、暗いまま。


 ドドドドドドドド

 バシャーン


 ゾンビはずっと元気に動き続けている。


「やっぱり、ちょっと寒いかな」

「そうだね」


 雨のせいか季節柄か、肌寒く感じる。暖房をつけると外の室外機が動いてゾンビがこっちに来るかもしれない。でも寒さには耐えられる自信はないし、これからもっと気温も下がって、本格的に冬になったら、どうなるんだろう。


「ちょっと、パパの部屋に行ってくるね」

「わかった」


 快適だ。

笑みがこぼれる程に、快適に過ごしている。ご飯があって、寝床もあって、何より危険に晒されない室内にいる。今の世界の中でこれほど充実した場所はないだろう。

 この川のもっと向こうのは、今だ逃げ惑う人がいるのかな。


 止まない銃声、どこから来るかわからないゾンビたち。

そんな中、安全な家の中で料理したり動画を見たり、毎日すやすやと眠れるこの整った環境。


「いつになったら終わるかな」


 ぽろっと、口から出てきた。

人の部屋の中でひとり。暗い曇り空に、誰にも聞いてないけど、答えもいらないけれど。

 不安と安堵も感じられるこの生活のせいで、頭がおかしくなったのかもしれない。

ずっとこんなこと考えてるな。起きてご飯食べて、動画見て会話して、たまに怯えて、お風呂に入って、寝てまた起きる。


「あー」

 また同じようなこと考え出した。


「これ見つけた」

「カイロ?」

「暖房をつけるほどでもないけど、寒いときはこれ使って、あと2箱あるから」

「ありがとう」


 朝と夜に、手や足先が冷えるようになってきた。寝るときも手元に置いておこうかな。そういえば、


「これ使おう」


 私は自分の家から湯たんぽを持ってきていた。あの時の私、グッジョブ。


「1つしかないし、マナが使ってよ」

「一緒に使おうよ」

「ミクそんなに寒がりじゃないから、大丈夫」


 寒がりで冷え性なのは私だけか。

早速カイロを1つ開けてクシャクシャと手で揉むようにして温まるのを待った。

張るタイプのカイロも見つけてきたらしく、部屋の隅に置いてくれた。


「毎日同じような1日でさ、頭がおかしくなりそうだよ」

「ミクはちょっとだけ楽しいよ」

「そっか」

「サバイバルだよ。小さいころ見たことあるんだ、タレントさんが無人島で、自給自足しながら1週間生活するの。無人ではないけどちょっとしたサバイバル生活みたいで楽しい」

「……うん」


 楽しまないとやっていけないよね。


「マナと一緒に生活できてることも楽しいよ」

「私も」

「よかった。ゾンビは怖いけど、ミクたちなら大丈夫だよ」

「私もそう思う」

「楽しく強く生きようね」


 ゾンビに邪魔されないこの生活が続きますように、いつか元の世界に戻りますように。



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