11月5日(火)

ばばばばばばばば

ババババババ

 ドォーーン

バババッ

ドドッドドッ


「まだ、遠いね」

「うん」


 早朝から発砲音が聞こえてる。今は夕方だからもう何時間もこの音を聞いている。

遠くからの音なんだけど、反響しているせいかそれなりの大きさで聞こえてくる。


「まただ」


バシャーン


 家の前に、ちょっとした川が流れている。ゾンビか川の方向に向かって歩くため、川に飛び込んでいく。

もしかしたら、音につられて歩いてるのかもね。とミクと話していたところだ。


 カーテンの隙間からゾンビを眺めていても、見えてないのか気づかれていないだけなのか、こちらを見向きもせず東京駅の方面に進んでいくゾンビたち。

このままみんな集められて、一気に消滅してくれればいいのに。


「ご飯作ってくる」

「うん」


 外の騒音のおかげで少しの物音では気づかれない。ただ夜に明かりをつけるのは怖いから、晩御飯は早めに作って懐中電灯の明かりだけで、部屋にこもっている。


 周りに家が建っていたら、もっと安心もできたのかもしれない。

駅から割と近いにも関わらずここにはミクの家がぽつんと建っているだけ。

3件隣に家が建つ予定があるだけで、周りはまだ土地の状態。こんなにでかい家の隣に建てるなんて、勇気いるもんね。


 学校からは時間がかかるけれど、スーパーもコンビニも近いし、不自由はないんだよな。まあ、東京だし。

 地元だと電車なんて、ピークの時間にしか走ってないイメージだし、駅前も栄えてないし、街中の店も早く閉まるし、都会って便利だよね。


───

「マナちゃんって東京出身じゃないんだ!」

「うん。親の仕事の都合で引っ越してきた」


 自然が多くて、空気も澄んで、みんな畑や田んぼを持ってて──

なんて、田舎ドリームを聞かされた後に、そんなこともないと現実を教えた。東京に夢を抱いていた私の都会ドリームも聞いてもらったな。

人気の飲食店が多くて、話題の雑貨や必要なものがすぐに手に入って、一日中キラキラした場所、だと思ってたって言ったらミクは


「実際どうだった??」

「最初はキラキラしてたんだけど、今はたまに垣間見える静かな街中もあって、いい感じ」


 そんな見え方もあるんだね。と目をキラキラされたのを覚えてる。

その日は、自分の中にはないノスタルジックさを感じたくて、隠れ家みたいな、路地にある喫茶店に行って一人でクリームソーダ飲んだっけ。


───


 ドドドッドドドッ

バシャーンッ


「今日はオムライスだよ」

「食べたいと思ってた」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る