11月2日(土)
「流石にお腹すいたね」
「うん」
昨日は何も食べずに水だけ飲んで過ごしていた。
夜中に外で物音が聞こえたけれど、風が強くて物が飛んできただけだった。
ゾンビらしき人影も見られず、それでも東京、新宿、渋谷、人口が多いところでは未だにゾンビがいるらしい。最初は数こそ多くはないものの、噛まれた人がゾンビに変異して数がどんどん増えている。
ここにもゾンビが来る。近いうちに。
「腹が減っては戦はできぬ。生き抜くためにも食べよう」
部屋に1人でいるのはまだ怖くて二階のキッチンまで一緒に行って、ミクがお味噌汁を作ってくれた。具は、定番のお豆腐とワカメ。優しい味噌の味と温かさが胃袋に染みる。
物音にも敏感になって、ビクビクしながら過ごしているけれど。非日常を楽しんでいる自分がいる。サバイバル生活というのか、ドラマで見るような空想世界にいる感じ。
「なんかさ、ランニングデッドとかああいうドラマみたいだよね」
「あんな世界になってもらったら困るけどね」
「ゾンビって頭を破壊すればいいんだっけ」
スマホを使ってゾンビの倒し方を調べてみた。
頭部の破壊が最も効果的。検索したサイトの上位に出された文字列。
SNSには実際にゾンビに攻撃を仕掛けた人もいるらしく、動画が上がっていた。
動画内には金属バットでゾンビの頭を、ホームラン!の掛け声に合わせて一振り。
相当な腕力の人なのかグロテスクな方向に頭が動いてゾンビの動きが止まっていた。
その動画を撮影した人は今は建物内に避難しているらしく、ネットの急上昇ランキングにも上位にいて、沢山のコメントが寄せられていた。
私たちは金属バットなんて持ってないし、持っていたとしてもあんな腕力だ振り回すこともできない。
「見て」
ミクが見せてきたのは、マイチューブの1本の動画。
動画にはマイチューブ界で日本一の登録者がいる、マイチューバーが映っていた。
「皆さん、絶対に外に出ないように。国に任せましょう。僕の家からも、見えるんですが、この通り外にはゾンビがいて、あ、人だ!あ、ちょっと映せない……」
自衛隊も動いてる。と聞いていたのに、自衛隊らしき人影は見られなかったし、ゾンビであふれかえっているようにも見えた。
ゾンビの発生のほうが早くて、対処に追いつかないのだろうか。
何にせよ私たちが今できることは、建物内に籠って身の安全を確保することしかできないのだ。
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