第2話

「それで、なんで遅刻したんだ?一条」


例の教師が不思議そうに問いかけてきた。この教師、入学式初日で生徒全員の名前把握してんのか。見かけによらず真面目な面もあるのかもしれないな。

って、今はそんなことを考えてる場合じゃない、なにか返さなくては。



正直に遊びでマレーシア時間に設定していたことをいうか?いや、だめだ、そんなことしたらみんなに馬鹿な奴だと思われて詰む…


「おおい?どうしたー?」



もういい。なるようになれ!



「スマホのタイムゾーンをマレーシア時刻にしていたんです、それで時間勘違いして遅れました…」



教師だけでなく、後ろに続く生徒たちからもどっと笑いが起こった。これ絶対馬鹿にされてるやつだ…終わったな、俺の高校生活…



みんな腹を抱えて笑っている。



そこまでか…?時間を間違えたぐらいで、別に面白くはないとおもうんだが…



次の瞬間、教師がみんなの気持ちを代弁するかのように言った。



「それにしても、入学式に一時間半遅れてきたうえに、カバンまでわすれてきた奴はさすがに前代未聞だろ…きゃははははは」


ん?カバン?



教師の笑い方がキモすぎることには気づかず、俺はゆっくりと周りを探した。



すぐに、席がわからないためカバンを席の横にかけたはずがないことに気づいた。



そして、いやな予感をいだきつつ―――――――――――――――――――――――というか教師の言葉でもう希望はなかったが、縋るように期待して肩にカバンがかかっていないか確認する。



当然、カバンはかかっていない。


頬がだんだん紅潮していくのがわかった。

そして、俺は過去最大級に赤面した。



教師はそれを察してか、


「まあいいさ。そんなこともある…ある?いや、ないか…うん、ないな!

ああいやまあ、とりあえずこの話は終わりだ、ささ、みんな席に着けー!」


と、フォローになってないフォローを俺に入れてきたのだった。



正直そこからの記憶は飛んでいる。さっきの出来事がショック過ぎて何も頭に入ってこなかった。


過去を悔やんでいても仕方ないので、俺は気を取り直して教師の話に意識を傾けた。


「で、ここからが本題だ。知ってるとはおもうが、うちの学校は入試の成績だけでクラスを分けない。今日これからみんなにはクラス分けテストなるものを受けてもらう訳なんだが、それと入試の成績を3:2の割合で評価し、総合的な結果でクラスを分けることになる。だから、今日ここにいるメンバーは同じクラスにならない奴のほうが多いぞー。ま、そんなとこだ。あ、11:00からテストを始めるから、5分前には座っとけよー」



クラス分けテストがあることは知ってはいたが、やっぱ変な高校だな。


入試の成績で分けたほうが二度手間にならないだろうに…


さて、どうしようか…


立花はめちゃくちゃ頭いいから超高得点を取るだろうが、10年も同じクラスというのも飽きてくるし、ちょっと低い点数取っとくか…



ふぁあ、それにしても眠い。昨日は趣味のデザートづくりの新レシピをいろいろと試していてあまり寝ていないから、いつもに増して眠い。まだ試験開始まで15分もあるし、少し仮眠をとるとしますか。


そして俺は深いねむりに落ちてしまった。


______________________________________




目を覚ますと、シャーペンを走らせる無数の音と、教師の「あと10分ー」という声が聞こえてきた。




やがて寝起きの頭が動き出し、状況を理解した。



すぐに試験問題の表紙を確認すると、英語(80分)と書かれている。

まじか。一時間半も寝ちゃってたのか、俺。


だが、幸い英語は俺の大の得意科目だ。ただの手の運動だとおもうくらいには。

遅刻プラスカバン忘れという誰も経験したことのないであろう黒歴史を作ってしまったからには、「あいつ頭もわるいんだ…」みたいな展開になるのはぜったいに避けねばならない。10分全力で手を動かして、せめて平均点をとれるように頑張ろう。



10分後。10分間全力で手を動かしつづけた俺はなんとか4分の3ほどの問題を解くことができた。書いた問題は全部正解できているはずだから、単純計算で7割5分の得点か。他のやつらは最後まで解ききっているだろうから、正答率も考えるとちょうど平均くらいだろう。狙いどおりだな。睡魔にあらがえなかったのは予定外ではあるが。




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幼馴染はどうしても俺を負かしたいらしい Nofusukeぐふぐふ @SternenclarerRespect

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