メロン

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  メロン



見えないところで

君が気遣ってくれていることに

僕が気付かないとでも

思っているのかい


バレないように

僕は見てるけど

君のさりげない行いが

僕の胸をしめつける


やわらかなその手が

そっとナイフに触れるとき

ほとばしる果汁のように

僕のすべての毛穴は開く


氷の冷たさが

何も感じなくなるほど

何かに夢中ってことは

きっとこれまでなかったね


えぐれるスプーンの

一さじ一さじ

いま僕の心臓までが

深く削られて行く


組んだ手のひらの向こう

ミルクを入れたコップ越しに

小さく開いた君の唇さえ

僕はまともに見れないよ


           (了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メロン ヤマシタ アキヒロ @09063499480

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ