四月
二〇二九年四月一日
向かいの広場の草が伸びきっている。そこに埋まっている何かを掘り起こそうにもやる気が起きない。草を刈るのも億劫だ。
二〇二九年四月七日
「日記の男」は人生すたーとしたのだろうか。いや、河童になったのか。じゃあ人生ではない。彼はなんという名なのだろう。
二〇二九年四月八日
やたらにテリーさんからの着信がある。全て無視した。
二〇二九年四月十日
白い髪を後ろに縛った、見た事もない六十代くらいの女が、うちのマンションを見上げてヘラヘラと笑っている。幽霊かと思ったが、他の人にも見えている様だ。
二〇二九年四月十三日
一人でにテレビのチャンネルが変わって「今日の死亡者」を淡々と読み上げていた。このご時世に、随分と攻めた番組だ。
二〇二九年四月十四日
早瀬文夫は自殺したと言っていたが、このマンションでしたのだろうか? しかし不思議だ。思えば日記の後半には殺されたというような事が書いてあった気がする。
違っただろうか? どちらでもいい。日記を読み返す気力さえ湧かない。
二〇二九年四月二十日
やる気がない。この日記も惰性でつけているだけ。日がな一日「河童」を読んで過ごしている。
河童……河童伝説……小川、信仰、祠……。
二〇二九年四月二十三日
『入居者が一年保たない曰く付きマンション』。始めは眉唾かと思ったが、これは間違いない事のようだ。ともすれば俺は八月まで保たないのだろうか? こんなに居心地がいいのに。笑える。
二〇二九年四月二十八日
大家は二人いた?
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