一月

  二〇二九年一月二日


 台所からギシギシと、何かが軋む音がする。日記の中と同じ。


    二〇二九年一月三日


  日記の最後にある「カハタロサマ」とは何を意味しているのか。


   二〇二九年一月五日


 精神科のナースが精神疾患になってしまうというのは良くある事なのだが、基本的に真面目で感情移入してしまう人がそうなりやすい。怖い言い方をするとのだ。だけど俺はそう言った人たちとは正反対の性格をしている。だから俺は大丈夫。一線引けている。


   二〇二九年一月十日


 アイスクリームをレンジに入れて納豆を冷凍室に入れているのに気付く。うっかりしていた。


   二〇二九年一月十一日


 最近職場で孤立している気がする。原因はわからない。しばらく誰の誘いにも乗らずに一直線にマンションへと帰っていたから、付き合いが悪いと思われたのかも知れない。


   二〇二九年一月十四日


 ……それにしても気付けばこの調査ノートを日記の様に使用してしまっている。「日記の男」と同じになっていく。


   二〇二九年一月十六日


 このマンションに来れて本当に良かった。手土産を持って、この感動を不動産屋の岡井にも伝えに行った。河童の事を話した。


   二〇二九年一月二十日

   

 祖母は折り畳まれた? 日記にそう書いてある。それはスーツケースに押し込める為なのか? となるとやっぱり……


   二〇二九年一月二十二日


  今時テレビが砂嵐になる事なんてあるのか、と驚いた。気味が悪いので消したのだが、気付けばまた点いている。仕方がないのでコンセント毎抜いて寝たら、夜中に砂嵐の音で目が覚めた。


   二〇二九年一月二十五日


 怪談会に参加する。やつれたと言われた。頭の中がボーとして、みんなの話をあまり聞いていられなかった。どうしてかあのマンションの事ばかり考えてしまう。早く帰りたい。自分が今体験している事を話さずに、俺は打ち上げへの参加も辞してあのマンションに帰った。テリーさんに何か言われた気がするが、覚えていない。

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