05 襲撃


「本日はお忙しい中、聖女バフォメット様のご活躍を祝うパーティーに……」


 聖女の活躍を祝うパーティー会場が静まったタイミングで、伯爵によるお決まりの開会あいさつが始まった。ここまでは何も問題は起きていない。


 強い魅了で倒れた男爵も、すっかり元どおりになり、伯爵の腰ぎんちゃくとして付き従っている。


 来賓の国王は、特別に配置した近衛兵に護られている。彼らは、催眠状態の魅了の有無までも検査した精鋭たちだ。



 私が襲撃するなら、聖女への花束贈呈の時に、贈呈者を魅了して襲わせるが……


 贈呈者は伯爵夫人だ。金髪で、海を思わせるブルーの瞳だ。若く見えて、初等部の娘がいるとは思えない。


 ん? 伯爵夫人の態度がおかしい。花束の間から、光るものが見えた!


 伯爵夫人の方へと走る……


「キィ~ン」何か耳障りな高音が鳴った。



(またか! 今度はなんだ?)


 護衛兵の一部が、なぜか狂い始め、舞台上へと向かってくる。その先は……攻撃目標は、公爵と聖女だ!


 まずは、私は伯爵夫人の持つ花束をケリ飛ばす。やはりナイフが仕込まれていた。


 落ちたナイフに驚いたのは、意外にも伯爵夫人だ。知らされていなかったのか? それとも、夫人を狂わせて、ナイフを使って襲撃する作戦だったのか?


 ナイフの始末は腰ぎんちゃく男爵にまかせ、公爵と聖女の保護に向かう。


 公爵と聖女は、ともに、珍しい銀髪であり、目立っている。


 二人へ突撃してきた狂った護衛兵の足を払い、転倒させる。


「「キャー」」会場からの悲鳴だ。


 なんだ? 会場の貴族の一部も、狂って、見境なく暴れ出していた。


 これほどの人数に、一瞬で魅了魔法をかけて、狂わせたのか。


「くそ、犯人は、S級魔導士か!」



「きゃぁ」


 今度はステージの脇から女性の叫び声が聞こえた。伯爵夫人の声だ。


 振り向くと、腰ぎんちゃくである男爵が、拾ったナイフで、上司の伯爵を刺していた。



(しまった……)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る