第2話 秘宝
武器庫の最奥の扉を開くと、そこにはなにか怪しげな研究室のような。正面のデカい円柱型のガラス製らしき筒の中に、恐らく俺の求めている装備が浮かんでいた。中に液体は入っているようには見えず、謎技術で宙に浮いているようだった。
「これがレジェンド装備……」
装備は武器と防具とアクセサリー一式がまとめて置いてあり、筒のすぐ下辺りにネームプレートがあった。
【白竜爪の幻槍】(模造)
【白竜鱗の防具一式】(模造)
【激流の腕輪】(模造)
全部模造品かよ!? え、本物は?
どこを見ても目の前の模造品しかなく、値段はセットでしか買えず、1200億円と書かれていた。わぁお……。
そこで突然横からかなり年老いていながらも、背筋が真っ直ぐのタキシードを来た男の老人が話しかけてきた。
「ガードマスターのお客様ですか。こちらは最近本物を忠実に再現された、新たに作られたレジェンドランク装備。白竜一式でございます。ガードマスター様には少しお見劣りするかと思いますが、国の最先端技術で作られたこちらは、きっとお客様の満足行く性能を見せるでしょう。所で、なにか険しい表情をしておりますが……まさか予算が無いとは言いませんよね?」
「その通りだが何か? 金に興味が無い覚醒者だっているだろうに」
「は、確かに。私の失言をお許しください……」
「まったく、これだから金持ちは嫌いなんだ。資金マウントなんて惨めだろう。でも金がなくちゃ買えないんだろう? わーってるって」
俺はとりあえず次は金を稼ぐことに専念しようと潔くそれを一旦諦める。まぁ、1200億なんて……一昔前の俺なら一生届かない金額だが、今の俺なら余裕だろう。
という訳なので俺は早速金を稼ごうとまず自分の家に帰る。今すぐ金を稼ぎたいのは山々だが、この家にあるゲートでは最後にやらなくちゃいけないことがある。そう、ボスの撃破だ。
俺はもう何百何千回とここを周回し、雑魚という雑魚モンスターを数万体倒して、
どうやらここのボスは自ら召喚して戦うタイプのようで、円形状の大広間の、入り口から入って一番奥の壁際に一つのボタンがある。これを押すことでここのボスを召喚出来る。一応俺は以前に一回挑戦したことがある。結論だけ言うと、勝算0%。
モンスターの名前はジャイアントデーモン。シルバーとゴールドの間に位置する強ボス。なのはずだが……、俺が出会ったこいつは恐らくマスターにピッタリのレベルだった。
マンション5階くらいのとにかくデカい身体のデーモンってことでこの名が付けられたんだが、俺の知識より遥かにコイツは速かった。
バカでかい身体に、極太の腕から放たれる拳は遅くて破壊的に強いって相場が決まってる筈だろ。なのにだ。こいつは足も速えし、攻撃も見て避けるじゃ間に合わないレベルに速え。いくら遺物荒稼ぎした自分でもどうやって勝つんじゃい! と匙を投げる程だった。
だがしかし!! 今の俺なら再チャレンジが出来るかもしれない。今度こそこいつをぶっ殺す!
そうして俺は自室のゲートに入り、最奥の壁際の手のひらサイズのボタンを押す。そうすれば円形状の中央からクソでかい白い魔法陣が現れ、ボス。ジャイアンデーモンが姿を現す。
「ウオオオオオオオオ!!!!」
ひぃ……! 雄叫びだけでも全身がピリピリする。よっしゃリベンジだぜこの野郎ッ! ……なんか前回より変なオーラ纏ってね……?
「ウオオオォアアアッ!」
ジャイアントデーモンは召喚されればすぐさま豪速球のようなストレートを打ち込んで来る。俺はそれが来ることを予測していたので、打たれる直前に【リフレクションシールド】発動し、攻撃を反射。ジャイアントデーモンは自身の攻撃が完全に跳ね返った事でバランスを大きく崩す。
「今だッ! 【ニュークレーザー】!!」
俺はデーモンに向けて片手を銃の形にすると、指の先端から紫色の光線が頭に目掛けて放たれる。が、デーモンは咄嗟に腕で顔を覆う事でダメージを軽減する。
「グオオオアアアアッ!!」
次に来るのは両腕による高速連打。かと思いきや、拳に爆炎のようなオーラを纒ってから殴ってくる。俺は即座に【マジックシールド】と【リフレクションシールド】を二重にして展開するが、ここで俺のパッシブスキルである【全属性耐性Ⅲ(93%)】が仇をなす。たとえほぼ9割ダメージカットだとしても、残り7%分はダメージがシールドを貫通してくるんだ。
「あちちちちっ!? マジで許さねえぞテメェッ!?」
もう次で終わらせてやる。多少のダメージは我慢するべきだ。俺はここのゲートを終了させるためにお前にリベンジしたんだよクソッタレがよぉ!
「【リフレクションシールド】全展開ッ! からの【ニュークレーザー】連打ああああ!」
【リフレクションシールド】を自分の目の前ではなく、このダンジョンフィールド全てを覆うように展開すれば、【ニュークレーザー】を壁という壁に向かって乱射する。そうすれば、無数のレーザーはシールドによって無限に反射を始める。
反射されたレーザーはデーモンの身体を貫通するか、破裂するかでさらに壁に衝突し反射。レーザーは短く、細かく、どんどん加速していく。念の為に自分に被弾しないように自分の周りにもシールドを展開する。
「グギッ!? グァッ! ガァッ!」
「ほれはれどんどん反射してけぇ〜? テメェの体をズッタズタにしてやるよぉ!」
「ウオオオオオアアアアッ!!!!!!」
これで致命傷にならないことは想定していた。しかし、あっちもどうやら最後の力を振り絞ってくる。無数のレーザーに身体を焼かれながらも、片手をこちらをゆっくり伸ばすと、最悪なことに俺の同じニュークレーザーのさらに極太版の発射準備をし始める。
急速にジャイアンデーモンの手に収束していく光は、紫色の光球になりつつ、またどんどん大きくなる。アレをもし撃たれたら絶対に耐えられないし、俺の身体は一撃で蒸発するだろう。
なんとこれもまたタチが悪く、【ニュークレーザー】は無属性攻撃に分類される。物理でも魔法ですら無い。核エネルギーを超圧縮して放たれるこの一撃は、大抵の物を簡単に貫通する。よって、今の俺に防ぐ方法は無い。
「やばいやぼいやばい! こうなったらもう相殺するしかねぇっ! うおおおお!!」
俺はデーモンのレーザーが放たれる前に、両手を前に突き出し、【ニュークレーザー】を二重に発動。実質的に二倍の火力だ。デーモンより劣るが、極太レーザーを撃つッ!
そうすれば放たれたのは同時だった。これまでに聞いたことがない、空気が切り裂かれる爆音と、失明してしまいそうな程の光線の眩しさが互いにぶつかり、返し押されを繰り返す。
モンスターの分際が、調子に乗ってんじゃねえええええ! ああああああ!!
俺はとにかく叫ぶ。叫んだ所で威力がます訳では無いが、叫ぶしかなかった。ここで負けたら俺は確実に死ぬんだから。
そしてレーザーの圧力に勝ったのは、俺のレーザーだった。勢い余って転けそうになるのを踏ん張り、レーザーの出力を止める。
ぱっとジャイアントデーモンの方を見れば、その馬鹿でかい頭は完全に消しとんでいた。
「はぁ……っはぁ……っ! よっしゃああああああっ!! 勝ったああああ!! 危ねえええええぇ。マジで死ぬところだった……」
勝利の雄叫びを上げ、息を整えつつ、さぁ報酬はなんだ!? と思って消滅していくジャイアントデーモンの方へ走る。そこには……。
真っ黒で両手でサイズの、球体がごろりと一つだけ落ちていた。なんだこれ……? それを拾えばずっしりと重たく、特大サイズの遺物かとも思った。だが叩こうとしてもカチカチに硬く、よっぽど破壊出来るような代物では無い。そう両手で球体触れた時だった。頭の中に新たなスキルを獲得する時と同じように、ただ二つの言葉が浮かび上がる。
【ゲート召喚Ⅰ】
【ゲート回収】
……は? 嘘だろ?
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