第2話 鼠、しばらく蟹に変身しよ
来た時満潮のようだった人混みは、今同じ勢いで引いている。
俺は砂浜を洗い流す波の残した、一番地味な貝殻のようであり、静かにへばりつき、他人事のように眺めている。
いや、違うかも。
俺は貝殻でなく、群れの中に混雑したくない一匹の反抗的な蟹なんだ。
もう少しここにいるだけだよ。
どうせ後で海に戻るし。
うーん、まぁ、そうでも、
ないのかもしれんな。
このまま砂の奥へと潜るのもすてきじゃね?
その時、俺が異様を感じる。
横の空気が、ものすごく気づきにくくあったかくなってきてる。
あ、なるほど。
反抗的な蟹って、二匹いる。
からといってさ、俺は訝る気持ちを表していかないよ。
積極的なタイプじゃないのはともかく。
最も主な原因ってやはり。
同じく、蟹であるとしても、異なる種類が分けられる。
遊びのつもりだったのか、そっちがただ波のリズムからつい外れてしまったのではないかと。
たとえ人たちに近寄っても、明るく儚い殻で拾われ、珍しい宝扱いされがちだな。
一方、俺は何であれ、地味というレッテルが粘り続いていくんで、活発的な子どもに蹴られてもおかしくない。
更なることに。
俺は海が怖く、嫌いなのだ。
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