♯4 衛星軌道ステーション強襲_2
[システム起動]
[
衛星軌道ステーション、第13格納庫。レオンは専用機〈スティールベイト〉に乗り込むと、警報に構わず機体を固定するアームを強引に引きはがす。そして周囲を漂う兵士の死体をそっと払いのけながら出口へと歩みを進めた。
格納庫の制御権は先ほどまでレオン達工作員たちが握っていた。しかし今はカウンターハッキングを受けて拮抗状態にあり、中の機材は動かせない。
そのためレオンの機体は出撃のためにハンガーを破壊する必要があったのだが、外の宇宙空間と格納庫とを隔てる隔壁もまた開くことはできないはずだった。だがその開かずの扉は高出力のレーザーでズタズタに切り裂かれている。
『どういうつもりだ、
レオンは怒りを抑えながら、低く吠えるように扉を切断した張本人──
先ほど基地内で追い詰められたレオン達は、窓を爆破して外壁を這うという危険なルートで格納庫の外部にたどり着いた。しかし通用口は封鎖されていて、手持ちの爆薬では中へ入ることができない。更に敵機と思わしきマシンが急速に接近し、レオン達は万事休すの状況にあった。しかも現れたのは見知らぬ装備を纏った第一隊長専用機『スペキュレーション』である。
死を覚悟したレオン達だったが、しかし敵機は彼らに危害を加えることなく、高出力レーザーで隔壁を切断。中に入ってマシンを動かすよう促したのだ。戸惑いながらもレオン達は内部へ侵入を果たし、急ぎ自らのマシンを起動させた。
無論、
つまり敵も味方も命がけで戦っている戦場において、気まぐれに手心を加えられたのだ。強者の余裕……否、傲慢だ。端的に言って
彼の言葉にカラスは平然と答える。
『……なぜそんな事を聞く。スコアが低いだろ、生身相手だと』
レオンは操縦桿を握りつぶさんばかりに掴んで、喉元まで上がってきた口汚い罵倒を辛うじて飲み込む。同時に背筋が冷たくなった。目の前の相手はこの期に及んでスポーツか何かのつもりで戦いに臨んでいるのだ。
『新装備を取りに行っていから基地の防衛は間に合わなかった。いや、そのタイミングを狙ったのか。うまいな』
素直に感心した様子のカラスの言葉がいっそうレオンを逆撫でする。今にもフルスロットルで突貫しそうだった彼が平静を保てたのは、背後から現れた戦友のおかげだった。
『来たか、ジョーカー!』
歓喜するカラスに深い溜息をついたレオンは、そのまま深呼吸に切り替える。目の前の怪物への憎悪を切り離す。
『……すまない。少し熱くなった。あぁ、大丈夫、大丈夫だ。君がいるからな』
戦闘補助AIが敵機の情報を分析し、警告する。彼の機体を取り巻くリング状のレールとそこに繋がれた複数の武装からなる不明なユニット。拠点防衛用と思わしきそれが秘める脅威度は予測不能だと。
『もちろん二対一でいいぞ! 早く試させてくれ! この新兵装〈アステロイド〉を!』
第一隊長は飾り羽を見せつける発情期の鳥のようにユニットを展開させ、流星のように宙を駆ける。重武装でありながら高い機動性も保っているという威嚇にも思えたが、ただ見せびらかしたいだけなのだろう。
『新しいおもちゃを手に入れて第一隊長殿はたいへんご機嫌のようだ。履きなれた靴で来なかったことを後悔させてやろう』
少し調子を取り戻したレオンは皮肉交じりに己を鼓舞すると、ジョーカーの〈ワイルドカード〉と共に足場を蹴りスラスターを吹かした。
『行くぞ、戦友!』
第四隊長の述懐~#はいたい 番外編~ マカロ2号 @J_G_M
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