第2話

空から着地した彼女は歩みを寄せ私に近づいて来た。私はすぐさま手を突き出し、

待って!!話を聞くからいくつか確認させて。

はい。なんでしょうか?

彼女は素直に応じて、その場で立ち止まり、私の言葉を待っている様子。

えっと、まず私に危害を加えようと企んでたりしてない?それと、あなた何者?その羽はコスプレ?本物?

突拍子もない言葉を並べたが、彼女は淡々と返答し始める。

危害など加えません!むしろ私は、鈴ちゃんを守りに来たんです!羽はコスプレなんかじゃありません!私は天界から来た天使で、この翼は私が誇れる立派な翼です!

えっへん!と言うように腰に手をつけ翼を私の方へ見せてくる。

天使!?だからそんな翼がついてるの?

はい!天界の者は皆、私のように翼があります!

自称天使を名乗る彼女は、翼越しからこちらを振り向き私へ笑顔を振りまく。

そんな天使の翼が興味津々になった今の私は、

あの、もし可能だったら、翼!触ってみたいんだけど…、駄目…?

えっと…、うーん…。しばらく間があったが、

分かりました。私の話、ちゃんと逃げずに聞いてくれるのでしたら、いいですよ!でも、翼は人肌波に敏感なので、触りすぎ注意です!これらを呑んでくれるのでしたら触っていただいて構いませんけど…。

やった!!ありがとう!

天使から了承を得て、表情が緩む私。手も少し、いやらしさを見せてしまう。

もー!!鈴ちゃん。調子いいんだから…!!

天使が長い黒髪を首横に掛け、私に背中を向ける。

私は、まず翼の先端を触ってみた、

おおー!ツヤやか!

羽というより頭撫でてるみたいで、サラサラだ!

上から下へ繰り返し優しく頭を撫でるようにしながら、続いて翼の付け根付近へ触ろうとする。

!?どうなってんの?この羽!浮いてない…?あと、この背中にある羽の形みたいな黒いの何?

翼は鎖骨付近から生えているのだと思ってイメージしていた私は、背中と翼の間が宙に浮いているのを目の当たりにして驚いた。それに加え、鎖骨近くに黒い羽のイラストが見え、頭を整理する為天使に理解を求めた。

あぁ。翼の刻印ですね。私、人から生まれた身なので、生まれつき翼がないんです。そんな私みたいな者が、天使になるとき神様からギフトとして翼を贈られるんです。その時背中に刻まれるのが、鈴ちゃんの言ってる黒い羽のイラストってやつです!

浮いてるのは、刻印から翼を出しているので浮き出てるんです。ちなみに!翼は刻印を使って出し入れできるので、こんなふうに…。

天使が大きく翼を広げると羽の先端から光が溢れ翼が次第に見えなくなる。羽から溢れでた光は天使の背中の刻印へと集まり、黒い刻印が光と同じ白色へと変化した。翼がすべてなくなると、刻印は元の黒へと戻った。

おぉ!ほんとに翼なくなった!

確かめるように、天使の刻印を興味津々に撫で回してしまう。

くすぐったいですよ…!!鈴ちゃん!

あぁ、ごめんなさい…。天使さん!また、次に羽を出すとき、さっきみたいに見せてほしいんだけど…駄目ですか?

いいですよ!何なら、次は一緒に空でも飛んでみましょうか。

えっ!!ホントに!やったー!ありがとう天使さん!それじゃ今から飛びたい!

えっ!?今ですか?

駄目…?

鈴は天使へ詰め寄り、両手を前に組んでお願い!と天使へ願う。

駄目ではないですが、夜は視界も悪いので今はごめんなさい!!代わりと言って何ですが、空を飛ぶ以外に何かやってみたい事はないですか?

やってみたいこと…。うーん。それじゃ!私を透明人間にできたりします?天使さんがさっき、私に羽を見せてくれて、本当に天使なんだって信じましたけど…まだ魔法とか疑ってる部分あるので…。

分かりました!透明人間ですね。確認なのですが、鈴ちゃんを周りの人物から見えなくする。って私のイメージですが合ってますか?

はい!あってます!

分かりました。それじゃ、その場でお待ち下さいね!

天使が私へ手のひらを向けると、私の頭上に天使の輪っかみたいなものが現れた。それは降下し私を包むほど大きく広がり、私の身体をすっぽりと上から下へ覆っていった。

はい、これでできたと思います。私は、魔法をかけた身なので鈴ちゃんを認知できてますが、他の人からは鈴ちゃんは見えてないと思います。

そう言われた私は手のひらを見つめ、手が透けている様子もなく何か変わった感じがしなかった。

今ので本当に、他の人から私見えない?

はい!魔法は成功してます。私は、こう見えても魔法の扱いは上手いので自身があります!

そっか。ありがとう天使さん!それじゃ本当に透明人間になったかちょっと実験してくる!

えっ!!鈴ちゃんどこへ行くんです?

えっとね!さっきここに来たとき、駐車場でいちゃつくカップルが居たから、その人達に見えてないか実験!検証しに!

そう答えながら鈴は、公園を後にし駐車場へ向かう。その後ろを天使はそっとついてくる。


駐車場に着くと、まだ車内に男女が居り、いちゃついていた。まさしくキス連呼の真っ只中だった。

あちゃー。超ーいちゃついていらっしゃる。ちょっと車ノックして邪魔してみようかしら。

いいんじゃないですか?それぐらい、水を差しても。

天使が私の捻くれに乗ってきて、天使なのにそんな事言っていいの?と思いつつ、横目で天使へ目を向ける。すると、あっ!天使は何かを思い出したかのようにこう続ける。

さっきかけた魔法ですが、姿を消しただけなので、私達の声が相手に聞こえるかもなので、近づく時は声を出したりしないよう気を付けてくださいね。

誰か居るとバレちゃいますから!

了解。忠告ありがとう!それじゃちょっと邪魔してくるね!

そう天使へ告げ、イタズラを楽しむ子供のような笑みを見せ、鈴は助手席側へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢見る少女は成人になっても変わらず少女のままで。 @majyonari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ