夢見る少女は成人になっても変わらず少女のままで。

@majyonari

第1話

お疲れ様でした。

とある田舎の老人保健施設に勤める今年26歳、独身一人暮らしの私、吉岡鈴は、遅出の勤務を終え着替えを済まし職員出入り口を後にした。

外に出ると夏の終わりが近く、風が涼しく感じる。空を眺めると夏の星座が小山に隠れ、冬の星座に変わるなと思った。それに大きな満々るのお月様まで見え、うっわー!!大きー!キレー!

誰も居ない駐車場にて思わず言葉を漏らした。

私は続いて、こう思う。

明日仕事休みだし、帰ってもアニメや漫画に浸るぐらいだし、近くの丘の公園まで寄り道してお月様見ながらゆっくりしよ!

思い至ったら行動の私は車に乗り込み、最寄りのマクドへ立ち寄ると期間限定のお月見バーガーとシェイクを買って丘の公園へ向かった。


公園に着くと駐車場に車が1台停まっており、乗車中の男女は何やらカップルのようだ。

ひとけがないと思ってイチャラブしに、来ているのだろう。駐車場に車を停め、エンジンを切りちらりと停車中の車へ目を向けると相手がミラー越しにこちらを見ているのが見えた。相手も私のように誰か居る。と警戒しているのだろう。

はいはい、お邪魔しました。どうぞ、お車の中でイチャラブしてくださいまし。と顔はしれっとしてる素振りを見せつつ、心の中では捻くれを呟く。

手持ちカバンに貴重品や車のキーを入れ、まだ温かいバーガーと冷たいシェイクの入った紙袋を持ち、車から降りる。公園内の街灯は少ないが、月明かりのおかげか足元や遊具がよく見える。公園内の遊具を抜けた先にある、夜空を見渡せるひとけのないベンチへと私は向かった。

ベンチに到着すると、荷物を置きシェイクと携帯を持ち寄りお月様背景にシェイクを掲げ、1枚写真を撮った。これは最近私のマイブームというやつ。近くのカフェや食事に1人出かける時は、家からアニメグッズを持ち寄り食べ物を背景に周りを気にせず写真を撮っている。撮った写真が気に入れば、即座にLINEのトップ画にまで使用している始末だ。

今日の写真の出来は、お月様がぼやけてしまうし、視覚ではあんなに大きいお月様なのに、レンズを通すと小さく見えてしまう。とても満足のいく写真が撮れずにいた。

もうーいいや。食べよ!お腹すいた…。

ぼやきながらベンチに腰掛け、バーガーを取り出し

いただきます!大きな一口目をほおばり、てりやきのタレがハンバーグと目玉焼きに押しつぶされ、はみ出たレタスの上にとろりと落ち、勢い余って落ちてしまうところだった。

五分と経たずぺろりと平らげ、甘いシェイクをすすりながら空を見上げる。

やっぱりこんなに大きいお月様久々に見たなぁ。

何とかムーンの日ですってまたニュースで言ってるかも。と淡々と1人で語る。

すると、後ろから誰かの声が聞こえた。

この季節だったら、ハンターズムーンの満月でしょうか?

声にビックリしつつ後ろを振り返ると、目を引くほど美人な黒髪ロングの女性がいた。女性に魅了され間が空いてしまうも、すぐさま挨拶からはじめ返答する。

こんばんは。ハンターズムーン…?ですか?はじめて聞きました。

あまり、耳にしませんものね。この時期は月が夕暮れ頃に昇って明け方頃に沈むので、夜道は明るいですが、ハンターと名前がある通り獲物を見つけやすいので、あまり出歩かないほうが安全ですよ。

女性は笑みを浮かべ不気味な話を終えた。

私は思う。獲物を見つけやすいので、あまり出歩かないほうが安全!?どういう意図があってそこまで話したの!?そもそもこの人いつから居た!?女性に対する警戒心が上昇しつつ、ベンチから立ち上がり荷物をまとめ立ち去る準備をはじめる。

へぇー。そうなんですね。教えていただきありがとうございます。よければベンチ使ってください。

私は食べ終わったのでおいとまします。

もう帰るのですか!?10分ほどしか滞在してないじゃないですか!もう少し鈴ちゃんとお話したいです…。

女性の言葉を耳にし、私の警戒心メーターの振り幅が越えた。

何でこの人私の名前知ってるの!?はじめましてだよね。しかもいつから居たかも把握されてる。この人ヤバい人なのかな…。こんな美人で優しそうな見た目なのに…。

すみません。月を見に立ち寄っただけなので帰ります。では…。

女性の横を通り抜け歩き出すも、数歩でドン!派手に見えない何かに、正面からぶつかった。

いったー!!ぶつけた顔を片手で覆い、もう一つの手でぶつかった正面へ手をかざすと、壁?ガラス?目を向けるも視界は開けているのに前へ進めない。上や横を見るとベンチを中心に四角い囲いに覆われているようだ。

なにこれ!?現状がすぐに理解できず行き詰まる私へ謎の女性が声をかける。

ごめんない。鈴ちゃんとゆっくり話したくて、シールドを張ってたんです。まさか、そんな大胆にぶつかると思わなくて…。ケガしてないですか?もしケガしてたら治癒魔法をかけるのでベンチに腰掛けてください。

いやいや、シールド!?治癒魔法!?何言ってるのこの人。脳内で現状を理解するため思考を廻転させ、女性へ思ったことを口調荒く問い詰める。

あの!そもそも何で私の名前知ってるですか!!はじめましてですよね。ここにいつから居るのかも把握されてて恐いので、私はあなたをすごく警戒してるんです。だから、分かりましたと並んで座れるほどの余裕はないので、直ちに帰りたいです!このシールドという壁みたいな囲いを消せるなら消してください!

私の表情が険しくなったのを目にしたのか、女性は少しおどおどしながら、

えっと、分かりました。シールドは解除しますから、怒らないで…話がしたいだけなんです…。

そう言うと、スーとシールドという囲いが上から光となって溶けはじめた。その光景を唖然と口をあけ目にしつつ足元までシールドが解けた瞬間、私は、走り出した。えっ!!待って!と手を伸ばしかける女性を1人置いて車までダッシュした。


遊具があるところまで来て、チラリと振り返るも女性は付いて来ておらず。はぁー。と安堵し、走るのをやめ、荒い息を整えつつ。

何さっきの…。マジでシールドって…、防護結界みたいな…。ここは異世界か!?なんて…。仕事帰りの現実世界だよここは、現在進行形で…。自問自答し落ち着きを戻し、後ろを警戒しつつ足を止めず歩き続ける。

すると、頭上を大きな陰が覆い、鳥?夜に飛んでるのなんで珍しい…。と陰を目で追う私はそれを見て、一瞬で目は大きく見開き、口はまた無意識にあいてしまった。

それは頭上を軽く飛び越え、私の進行方向へ着地した。

鈴ちゃん、待って!大事な話があるの!

それは、あの人だった…。先ほどの姿とは少し違い、背中には白い大きな翼まで付いていた。それを見て私は仰天し、また興奮したのだ。気づけば足を止め現実的ではない女性の翼に釘付けになり。

警戒心から、興味津々へと変化した。

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