またね。
魔女なり
第1話
「お疲れ様でした。」
とある田舎の老人保健施設に勤める今年26歳、独身一人暮らしの私、吉岡鈴は、遅出の勤務を終え着替えを済ませ、職員出入り口を後にした。
外に出て、ふと空を見上げると西の空に、夏の星座が小山に隠れていた。その光景を目撃した私は、『冬の星座に変わるな。』と思った。
それに続いて、東の空に目を向けると、大きなまん丸のお月様が昇っていた。
「うっわー!!大きー!キレー!」
誰も居ない駐車場にて、思わず言葉を漏らし、続いてこう思う。
明日仕事休みだし、帰ってもアニメや漫画に浸るぐらいだから、近くの丘の公園まで寄り道して、きれいなまん丸お月様見でも、眺めてみよう!
思い至ったら即行動の私は、車に乗り込み、月がよく見えそうな、最寄りにある、丘の公園へ向かった。
公園の駐車場に到着し、鈴は車から降りた。
公園内は街灯が少ないが、月明かりのおかげか、足元や遊具がよく見え、恐さなど感じないほど、辺りは明るかった。
公園内の遊具を抜けた先に、夜空を見渡せるひとけのないベンチがある事を知っている鈴は、足取り軽く進んでいく。
しばらく歩き、目的地に到着すると、ズボンのポッケに入れていた携帯を持ち寄り、カメラモードを起動させる。
記念に目の前のお月様を『パシャリ』
1枚、写真を撮ってみる。
しかし、写真の出来は、お月様がぼやけてしまう始末。視覚ではあんなに大きいお月様なのに、レンズを通すと小さく見えてしまう。
満足のいく写真が撮れず、暫く1人でもたつく鈴。
すると、突如後ろから、
「こんばんは。」
声にビックリしつつ後ろを振り返ると、目を引くほどの、美人な女性がいた。
彼女に魅了され、彼女の挨拶から、少し間が空いてしまうも、「こんばんは。」
無事に返答し終えた鈴。月に向かって掲げていた手を一旦下ろし、彼女と鈴の間に気まずい空気が漂い始める。
そんな空気に耐えきれず、近くのベンチに目を向け
「良かったらここのベンチ使ってください。座りながらでも、月や星がよく見えると思いますし。私はもう帰るので、失礼しますね。」
鈴は、ペコリと頭を下げ、女性の横を通り抜け、その場を後に歩き出す。
「あの!スズさん!待ってください!少しお話を…」
鈴の後ろ姿に声をかける彼女。ちらりと振り返りながらも、歩みを止めず歩く鈴だったが、数歩で、ドン!
見えない何かに、派手にぶつかった。
「いったー!!」
ぶつけたおでこを両手で覆い、
その場でうずくまる鈴。
片手を前に伸ばし、ぶつかった何かへ手をのばす。
?…!?…壁!?
目の前の視界は開け、障害物などないのに、見えない壁があるような…。これ以上前へ進めない。目を凝らし、辺りを見渡す。私を呼び止めた、名前の知らない彼女を中心に、四角い囲いに覆われているように見えた。
「なにこれ!?」
現状がすぐに理解できず、行き詰まる私へ、女性が声をかける。
「ごめんなさい…!スズさん!貴方と話しがしたくて、無意識にシールドを張っていました…。まさか、そんな大胆にぶつかると思わなくて…。おケガはないですか?もしケガをしていたら、治癒魔法をかけますので…。」
!?。鈴は、耳を疑った。
シールド!?治癒魔法!?何言ってんのこの人。
それに、何で私の名前知ってるの!?
現状を理解するため、思考を廻転させる鈴は、自分の口から彼女へ、勢いで問い詰めていた。
「シールド?治癒魔法?何ファンタジーみたいな事、言ってるんですか!?そもそも何であなた!私の名前知ってるんです?」
「えっと、順を追って説明させてください。」
そう言った彼女は、着ている服の裾を軽く摘み、おしとやかにお辞儀をしてから自己紹介をはじめた。
「私は天界から、参りました。リンと申します。
スズさんの事は、天界の主様や、仲間から話を伺っております。今回、このような形でお会いする形となり、唐突で申し訳ありませんが、スズさんが持つ強い魔力で、仲間を助けてほしいのです。」
「天界…?魔力…?助けてほしいって言われても………。何?私に魔力って力があるの…?そんなアニメや漫画みたいなの、現実にあるわけないじゃん…。」
少し呆れ気味の鈴。しかし、リンの表情は険しく。
切迫詰まった様子で引き続き、鈴へ訴えかけてくる。
「本当なんです!私は天界に住む天使です。仲間の1人が呪におかさせていて、天界の者では救うことができないのです!鈴さんに頼るしか、今は手段がなく、こうして人間界へ降りてきました…。どうすれば、私の話を信じてもらえますか?」
鈴は少し悩みつつ、
「ん………。あなたが、本当に天使だって言うなら、天使の羽でも見せてくれたら、信じてもいいけど…。」
「本当ですか!では早速、私の羽をお見せし、証明します!」
リンは鈴へすぐさま背中を向けた。すると、リンの背中が白い光に包まれ輝き出した。光は次第に大きくなり、その光の中から、白く大きな翼が現れ、鈴の目に映った。
そして、リンを中心に覆っていたシールドが、上部分から、シャボン玉のようにプカプカ浮き上がり、円をえがいて飛んでいく。
その光景を眺め、キレイ!と思ってしまうほど見惚れる鈴。
次第に、彼女へ向けていた警戒心が薄れ、目にした光景にワクワクし、
「何!!今の!!すごくキレイだった!
リンさん!あなた!本当に天使だったんだね!!
翼を出す時って、あんな感じなんだ!凄い!」
「はい…。ですから、先程から言っているように、私は天使です…。まぁ、信じてくださって何よりです。」
鈴の気転の変わりように、安堵し話を続けるリン。
「信じていただけた様なので、本題に戻りますが、鈴さん!唐突で申し訳ありませんが、今から私と一緒に、天界へ来ていただきたいのです。
呪の元である、指輪を、取り除いてほしいのです。」
「えっ!?今から行くの?それに、呪われた指輪を取り除くって…。すごく恐いんだけど…。逆に、私まで呪われない?」
「呪については、実際に立ち会って頂かないと、呪を取り除けるか…。それに魔力量や、状況によっては呪われるかもしれないので…、どうなるか正直、私にも分かりません…。」
「えっ!?私自身も呪われる可能性あるの!?
行きたくない!!」
そう断言した鈴だったが、目の前で黙り込み、表情暗くし俯くリンを目にし、言葉を選びなおす鈴。
「………。私の魔力ねぇ…。そんな力があると、今しがた知ったばかりだし…、私が天界へ行っても、何もできないかもだよ…。」
「天界に来ていただくだけでも、こちらとしてはとても助かります!ですのでどうか!お願いいたします!」
呪われるかもしれないと耳にし、行きたくないなぁ…。と思いつつ、深々と鈴へ頭を下げるリンを目にし、返答に躊躇する鈴。
「………まぁ、リンさんの言う天界とやらに、興味はあるし、行くだけなら行ってもいいけど…。ちょうど明日は仕事も休みで、用事もないし…。」
「本当ですか!では、直ちに向かいましょう!」
「えっ!?」
鈴の発した言葉に、リンは同意したと認識したようで、リンの険しかった表情が、少し緩んだように見えた。そう思った矢先。リンは何もない空間へ手をかざしだす。
すると、リンの手に、白い光が集まりだした。
白い光は扉の形へと変わっていき、白く大きな扉が現れた。
扉がギギーと重そうな音を響かせ、開け放たれる。
鈴は、扉の先を覗いてみるが、目が眩むほど眩しく、中がどうなっているのかわからない。
そんな光景を目にし、不安に駆られる鈴だったが、
「鈴さん、大丈夫ですよ。私の手を取ってください。」
鈴へ自身の手を差し出すリン。一度深い深呼吸をして心を落ち着かせる鈴。そしてリンの手を取り離れないように強く握り、リンへ今の自分の思いをぶつけた。
「正直さ!天界へ行くのは、不安がいっぱいで、いきたくないけど!大丈夫って言ったんだから、何かあったら助けてよ!リンさん!」
「はい!私がお供いたします。では、参りましょう!」
二人は扉へ向き直り、先の見えない光の中へ入って行く。
扉を通過した二人の姿が見えなくなると、ギギーと重そうな音を立て扉が閉まる。その扉は次第に、上部分から光の粒となって消えていき、公園には人の姿が消え、静けさだけが取り残された。
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