3.魔法のランプと恋のレガート/遠間千早(紹介No. 12)

 今回も、2024年10月21日に募集を締め切ったばかりの第1回ルビーファンタジーBL小説大賞の応募作品の中から、遠間千早さんのピュアなBL恋愛ファンタジー『魔法のランプと恋のレガート』を紹介します。


 このコラムの最後、------の後は少しネタバレになりますので、作品を読んでいない方は飛ばしていただけると幸いです。



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紹介No. 12


URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093085737265495


話数:29話(2024/10/13現在)


文字数:100,582文字(2024/10/13現在)


投稿状態:完結済


セルフレイティング:なし

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 トップページの注目の作品に掲載されていたのが目に留まって読み始めた時、まだ数話だけしか公開されていませんでしたが、すぐに物語の中に引き込まれて10月12日に完結するまで毎日の更新を楽しみに読んでいました。


 掲載許可を得るために作者の遠間千早さんにコメント欄で連絡した時、最近のBLの状況も尋ねたら、とても詳しく教えてくださって大感謝、意気投合しました。


 本作にはコンテストに応募している関係で詳細な紹介文が掲載されていますが、ここでは粗筋を短く紹介しておきます。



【粗筋】

 落ちこぼれの魔神「ジン」であるセナが長い眠りから覚めてランプから飛び出た時、目の前にいたのはカイルという美青年だった。次の州伯になる人間は精霊に選ばれなければならず、カイルはそのためにラクサという都市へ向かっていた。持ち主の願いを叶えるジンにカイルが願ったのは精霊との謁見だった。セナは大して魔法も使えず、役立たずを自覚したが、カイルはセナにいつも優しくしてくれた。旅の途中、サラマンダーの精霊マルゴや、セナに執着する商人、カイルの身内が現れて予想外のトラブルに見舞われる度に2人は力を合わせて解決していく。その間にも謁見の日が着々と近づいてセナとカイルの別れの日が近づく。2人はここで別れを告げなければならないのか? 土壇場でのカイルの決断とは?


*****



 ランプから出てくる魔神と言えば、大抵マッチョな大男の姿を想像すると思います。ところがどっこい、この作品の魔神「ジン」のセナはちびっ子で、とにかく可愛くて微笑ましいんです。何かあるとカイルにしがみつき、カイルはきゅっとジンを抱きしめるのがキュンときます。悪くとればあざといのかもしれませんが、セナが本当にかわいくて私はそうとれませんでした。魔神を受けに選ぶ(と言っても純愛です!)アイディアも斬新です。


 BLと言えば、エロありのイメージがあるんですが、この作品は性描写規制に厳しいカクヨムに相応しく、性描写のない微笑ましいハートフルなBLです。遠間千早さんも2024年9月29日の近況ノートで本作は「ちびっ子ジンと旅の若者のハートフルファンタジー」だと書いていますが、実にその通りです。


遠間千早さんの近況ノート「『魔法のランプと恋のレガート』を投稿しました。」(2024/9/29)

https://kakuyomu.jp/users/e-chihaya/news/16818093085781862663


 作品タイトルの「レガート」とエピローグの「アマービレ」は、胸キュン純愛ファンタジーにぴったりな命名だと思いました。作品タイトルがエピローグのタイトルにうまくかかっていてウィットに富んでセンスがあるなと感嘆しました。


『魔法のランプと恋のレガート』の情景やキャラクターの描写が見事だと思っていたら、本作は徳間書店のBLレーベルであるキャラ文庫のコンテスト「第2回キャラ文庫小説大賞」の最終選考まで残ったと後から知り、それも納得しました。


 本エッセイの「物書き徒然日記」第4話の追記にも書きましたが、このコンテストのフィードバックはとても懇切丁寧で、総評にも今後の応募作品は何に気を付けたらいいのか(例えば視点)書いてくれています。遠間千早さんは個別講評のアドバイスに従って本作品を改稿した上でカクヨムに投稿していますので、コンテスト応募時よりも読み応えが増しているはずです。


 遠間千早さんの実績はそれだけでなく、BLファンタジー『悪役令息レイナルド・リモナの華麗なる退場』(完結済、書籍化記念SS投稿あり)がアルファポリスで第11回BL小説大賞(2023年)に選出され、11月半ばに書籍が発売予定となっています。書籍化すると該当部分はレンタル販売に切り替わるそうなので、Web版を読みたい方は急いだほうがいいでしょう。でも遠間千早さんは読みやすさを追求して書籍版を大分改稿し、主人公達のやり取りを増やしたりしたそうなので、書籍版も楽しめるはずです。それだけでなく両方読むと、書籍化するとこんな風に改稿するんだって分かってきっと興味深いと思います。


遠間千早さんの近況ノート「アルファポリスから『悪役令息レイナルド・リモナの華麗なる退場』が書籍化します。」(2024/10/17)

https://kakuyomu.jp/users/e-chihaya/news/16818093086895646146


 私はBL小説を今まで碌に読んでいなかったので、遠間千早さんがそんな才色あふれる方とは知らずにしがない私のエッセイで紹介することにして、お恥ずかしい限りです。でも皆さんも感じてらっしゃると思いますが、カクヨムではBL小説は苦戦しています。遠間千早さんや前に紹介した畔戸 ウサさん、babibuさんのように筆力の高い方々にカクヨムでBLジャンルをどんどん盛り上げていただきたいです。もちろんそれ以外にも色々な作品も読ませてくだされば嬉しいです。


 現在のところ、『魔法のランプと恋のレガート』以外にカクヨムで読める遠間千早さんの作品には、同じくBLファンタジーの『荒くれ竜が言うことを聞かない』があります。こちらは前者と違ってケンカップルな2人のお話なので、また違うテイストを楽しめます。番号が欠けているエピソードにはR18場面が含まれているので、カクヨムでは非公開ですが、アルファポリスかムーンライトノベルズで読めます。


『荒くれ竜が言うことを聞かない』

https://kakuyomu.jp/works/16818093085745092912


『魔法のランプと恋のレガート』の私のレビューはこちら:

https://kakuyomu.jp/works/16818093085737265495/reviews/16818093086198308188



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↓まだ読んでいない方はネタバレがあるので、飛ばして下さい↓


 9月29日の近況ノートによれば、「一生懸命頑張る子の姿に絆されて骨抜きになっていくイケメン攻め」を描きたかったということですが、本当にその通りで胸がキュンキュンしました。カイルは最初からセナに甘々な感じでどうしてだろうと思っていましたが、最後の最後で疑問が氷解しました。


 最後は、これから2人(+精霊)がどうなっていくのかなぁと色々想像を膨らませられて楽しい結末でした。

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