第38話 帰り道

生徒会室に戻った二人は、白水さんの手の傷のこともあり、青波さんが「今日はこれ以上は無理だね」と判断して、仕事を早々に引き上げることにした。白水さんも、青波さんの冷静な決断に納得し、無理をせずに終わらせることに同意した。


「今日はここまでにしよう。手も休めた方がいいし」と青波さんが優しく言いながら、二人で生徒会室の片づけを始めた。机の上の資料を整え、電気を消して、生徒会室の鍵を閉めた。


外に出ると、すでに空は夕暮れ色に染まり、少し肌寒い風が吹いていた。二人は並んで学校を後にし、帰り道を歩き出した。


「大丈夫?手の方、痛くない?」と青波さんが気遣うように尋ねた。


「うん、全然平気。ありがとうね、本当に助かったよ」と白水さんは感謝の気持ちを込めて答えた。


それから二人はしばらく歩きながら、他愛ない会話を続けた。白水さんは特にこれといって重要な話をしているわけではなかったが、青波さんが静かに耳を傾けてくれることが心地よかった。


「最近、生徒会の仕事、結構忙しくなってきたよね。でも、なんだか充実してる気がするんだ。青波さんが一緒にいてくれるおかげかな。」白水さんは、ふと心の中にある感謝を口にした。


青波さんは微笑みながら「私も、白水さんと一緒にいると安心できるよ」と短く答えた。


白水さんはその言葉を聞いて、なんとなく嬉しい気持ちが広がった。青波さんが自分の話を聞いてくれている、それだけで十分だった。特に大きな話題や深い会話でなくても、二人が一緒に歩いている時間が、白水さんにとってかけがえのないものに感じられた。


その静かな帰り道、二人の間にある優しい沈黙とお互いを思いやる気持ちが温かかった。


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