第37話 生徒会室の放課後
放課後、生徒会室には静かな空気が漂っていた。白水さんと青波さんは、次の会議のために資料作りに集中していた。書類が散らばる机を挟み、二人は無言で作業を進めていたが、そこには心地よい一体感があった。
「このページ、どう思う?」白水さんはふと手元の資料を青波さんに見せた。
「うん、良い感じだと思うよ。でも、もう少しだけこの部分を強調した方が分かりやすいかも。」青波さんは落ち着いた声で助言し、手元の資料にペンを走らせた。
そんな中、突然、部屋が小さく揺れた。地震だ。揺れはさほど大きくなかったが、思いがけない出来事に白水さんは反射的に身を固めた。その拍子に、手元のカッターが倒れ、彼女の手の甲を軽く傷つけてしまった。
「痛っ!」白水さんは思わず声を上げ、手を押さえた。小さな切り傷から血がにじんでいる。
「大丈夫?」青波さんは驚くことなく、すぐに立ち上がって白水さんの手を確認した。
「うん、ちょっと切っただけだと思うけど…」白水さんは少し恥ずかしそうに答えた。
青波さんは冷静に近くにあったティッシュで彼女の手を軽く押さえ、血が止まるのを待ちながら、優しく声をかけた。「傷は浅いね。でも、保健室でちゃんと手当てしよう。」
白水さんは少し痛む手を見つめながら、青波さんの冷静な対応に感心していた。「ありがとう、青波さん。助かるよ。」
二人は保健室へ向かったが、ドアを開けてみると誰もいなかった。時間が遅かったせいか、保健の先生はすでに帰宅しているようだった。
「ここで待ってて。手当てするから。」青波さんは自信に満ちた表情で言い、手早く保健室の棚から消毒液と絆創膏を取り出した。
椅子に座る白水さんは、青波さんがテキパキと治療を進めるのを静かに見守っていた。彼女は手際よく傷口を消毒し、丁寧に絆創膏を貼った。
「これで大丈夫。そんなに深くないから、すぐ治るよ。」青波さんは微笑みながら、手当てを終えた。
白水さんは、自分の手を見つめながら、小さく笑った。「ありがとう、青波さん。貴方がいてくれて本当に良かったよ。私、一人だったらもっとパニックになってたかも。」
青波さんは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。「そんなことないよ、白水さんもちゃんと落ち着いてたし、これくらいお互い様だよ。」
その言葉に、白水さんはほんの少し青波さんとの距離が縮まったように感じた。
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