第13話 白水さんの事情

新学期の始まりとともに、白水さんは生徒会の会長としての役割をこなそうと奮闘していた。彼女は真面目で、前の会長のやり方を尊重しつつ、皆の意見を大切にしようと心がけている。しかし、その結果として自分の意見を抑えがちになってしまい、時には判断が遅れることもあった。


ある日の昼休み、生徒会室でメンバーたちが集まっていると、会話の中で「白水さん、大丈夫かな?」という声がぽつりと漏れた。議題に対する結論が出ないまま、話が進まないことが最近増えていたからだ。


青波さんはその場の空気を感じ取り、すぐに「まだ白水さんには時間が必要だと思うよ」と、さりげなくフォローする。「彼女は真面目で、一生懸命みんなの意見を聞こうとしてるんだ。もう少し余裕ができたら、きっと自分の考えもしっかり言えるようになると思う。」その言葉にメンバーたちは頷き、話題は軽く流されたが、青波さんの心の中では、白水さんへの不安と期待が入り混じっていた。


その日の放課後、青波さんは生徒会室で一人、考え込んでいる白水さんを見かけた。彼女はホワイトボードに書かれた次回の学校行事の企画案をじっと見つめ、深く悩んでいるようだった。


「白水さん、大丈夫?」と青波さんが声をかけると、白水さんは少し驚いたように振り返った。「うん、ただ…なんだか、自分がうまくできていない気がして。」と、彼女は不安そうに呟いた。


青波さんは静かに椅子に座り、白水さんの目を見つめて話し始めた。「白水さん、自分らしいやり方でいいんじゃないかな?大切なのは、自分の意見を持って、信じて進むことだと思う。」


その言葉に白水さんははっとした表情を見せた。「自分の意見か…でも、みんなの意見を優先した方がいいのかなって…」


「もちろん、みんなの意見も大事だよ。でも、リーダーとして決断するのは白水さん。あなたがどう感じて、どう動くかが重要なんだよ。」青波さんは優しく微笑んだ。


白水さんはしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。「そうだよね…私も自分の意見をもっと言わなきゃダメだよね。」


青波さんは安心したように笑みを浮かべ、「その調子!」と励ました。新学期は始まったばかりで、これからも困難は続くだろう。しかし、白水さんは一歩ずつ成長しようとしていた。そして、そんな彼女を支える生徒会メンバーもまた、一緒に歩んでいく準備ができていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る