第9話 意見箱と生徒会改革

文化祭の余韻がまだ残る秋のある日、青波さんは生徒会の会長室に向かいながら、胸の中に違和感を抱えていました。最近の生徒会は、会長の独断で物事が決められ、ほかのメンバーや生徒の声が軽視されていると感じることが増えてきたからです。副会長代理として活動を始めたばかりの彼女にとって、生徒会はもっと全員の意見を集めて調和を保つべき場所であるはずでした。


「このままで本当にいいのかな…?」と青波さんは心の中でつぶやきます。


そんな中、彼女はあるアイデアを思いつきます。「生徒会が生徒の意見をもっと吸い上げる場所にするためには、まず生徒の声を聞くことが必要だ。意見箱を設置したらどうだろう?」と。青波さんはすぐに行動を起こし、同級生や他の生徒たちと相談して、このアイデアを生徒会に持ち込むことにしました。


次の生徒会の会議で青波さんは提案します。「生徒たちの声をもっと反映するために、意見箱を設置してみませんか?さらに、全校生徒にアンケートを実施して、生徒会の活動についての意見を聞きたいと思います。」


会長は最初、この提案にあまり興味を示さなかったものの、他のメンバーが賛同したことで、意見箱の設置とアンケートの実施が決定します。アンケートの内容には「生徒会の活動に満足していますか?」や「会長のリーダーシップについてどう感じていますか?」といった、生徒たちが本音を伝えられるような質問が含まれていました。


数日後、集まったアンケートの結果は青波さんたちを驚かせました。「会長が独断で物事を決めすぎている」「もっと私たちの意見を取り入れてほしい」という声が予想以上に多かったのです。生徒たちの多くは、会長の強引なやり方に不満を持っていたことが明らかになりました。


会長に結果が報告されると、彼は顔には出さないものの、内心動揺を隠せなかったでしょう。生徒たちの信頼を失いかけていると感じた会長は、次第にその立場に居づらさを覚え、ついに「これ以上は難しい」として辞任を表明します。


生徒たちの信頼と意見を尊重した青波さんの改革は、多くの生徒から感謝されました。しかし、青波さんは自分の手柄にすることなく、「これはみんなの意見が反映された結果だよ」と冷静に答えます。


新しいリーダーが選ばれ、今まで以上に風通しの良い生徒会が誕生します。青波さんの行動は、学校全体の雰囲気を改善し、生徒たちが意見を言いやすくする一歩となったのです。そして彼女自身も、生徒たちからの信頼を深め、次のステップへと進む決意を固めていました。


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